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 職員は脳しょうを取りだして黒焼きにし、性病の妙薬と称して、ひとつ3~20円ほどで売っていた。

 新聞報道によると、その売上金は生活費のほか、遊びに費やされていたという。亡くなってもなお、遊ぶ金欲しさに身体の一部を売られるなんて、とても悲しい気持ちになる。

写真はイメージ ©GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

脳しょう盗み未遂事件

 さらに桐生火葬場事件を含むこれらの“脳みそ売りさばき系”が頻発するさらに前、未遂ではあるがすでに同じような事件があった。

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 昭和元年(1925)8月10日、栃木県上都賀郡鹿沼(かみつがぐんかぬま)町営火葬場の職員が、突然やってきた警察に連行された。

 それは、その日の朝に火葬場裏の物置小屋から、頭がかち割られた遺体が発見されたからだった。

 この職員はかねてから薬種商から、脳しょうを取ってきてくれと依頼されていた。そこで連行される前日の夜、ある男性の遺体を火葬する前、火葬炉に入れる直前に遺体の頭に鉈(なた)をひと振り。薪のように断ち割ったあと脳みそを取りだし、物置小屋に隠していたのだ。

 そこからがこの男の運の悪いところ。小屋に隠したまではいいが、なんと故人の親戚が物置小屋を覗いてこれを見つけてしまったのだ。

 その親戚はすぐさま鹿沼署へ通報。職員は逮捕となったのである。

 脳みそが売られる前の、いわば未遂事件のようではあるが、遺体を損壊し盗んだことには変わりない。