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皇室の“俗化”を懸念

 懸念しているのは、次代の天皇である悠仁さまの教育に対しても、同様の姿勢が感じられることです。

 いま、悠仁さまの受験に関する話題が取り沙汰されています。勉強して学問を究めたいという意志を持っておられるのは素晴らしいことです。トンボの研究についても、大いに励んでいただきたい。

 ただし、将来の天皇としての教育をしっかりと受けていただくのが最優先となります。本来、天皇に受験勉強は必要ありません。優先順位の一番上に受験勉強という“俗”の事柄を置くことは、果たして国民から納得を得られるでしょうか。

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 受験戦争で周囲と競争なさることも、皇室の民主化であり、「開かれた皇室」の在り方だとお考えなのかもしれません。しかし、「開きすぎた皇室」は必要ありません。それは皇室の“俗化”に他ならないからです。受験勉強という俗界基準の努力ではなく、聖なるものに向かって努力する姿を国民に見せること。これこそが、天皇と国民のコミュニケーションだと思います。

優先順位の問題

 一方で、悠仁さまの東大進学に対し、ネット上で1万2000余の反対署名が集まったというニュースにはいささか閉口しました。天皇になるお立場でやるべきことをやった上であれば、東大を目指すのは構わないはず。要は優先順位の問題です。そこまで思いを致すことなく、単に“特別な立場を利用して東大に推薦入学するのはズルい”というだけで反対するのは、センシビリティ(感受性)がなく、失礼な行為だと言わざるを得ません。

 天皇とは、歴史の永続性を私たちに見せてくれる存在でもあります。例えば歴代の天皇は和歌を残していますが、これに接することで、私たちは過去の存在を実感する。そして、未来にも天皇が存在し続けるということの可視化で、国民の心理の充足感、安心感が得られる。これは私たち日本人の大きな文化的遺産です。

 お若い悠仁さまには、受験勉強より大切な役割があることを今一度、理解していただきたいと思います。

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 9月4日(水)配信の「週刊文春 電子版」および9月5日(木)発売の「週刊文春」では、悠仁さまご成年を受けて、林真理子氏、山極壽一氏、尾木直樹氏、江森敬治氏からの必読提言「悠仁さまご成年『私はこう考える』」が掲載されている。