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記事の公開直後にわかった新事実

 同じ頃、新しい事実がわかった。

 私たちが記事を公開した2023年12月21日、熊本市はまさにその日に、急遽、当該施設に対し、新たに行政指導を行っていたのだ。入手した音声によると、熊本市は「児童の福祉に関して不適当な行為が認められた」として、以下の行為を事実認定していた(順番は本稿の主旨に沿って編集部で編集)。

熊本市こども局のある施設(筆者提供)

①女児の背後から両脇腹付近に両手を触れたまま密着した距離で女児といっしょに前方に歩いた
②女児が自発的に職員の膝に座るなどした場合、接触を止めるというルールを守らず足を職員のふとももに乗せて爪を切った。そのあと、2分程度接触したままテレビを観ていた
③寝転んだ女児の頭をふとももに乗せたままテレビを観ていた
④女児の洗濯物を触った
⑤特定の女児の居室に承諾を得ずに入った
⑥女児に対して「おまえ」という言葉を発した
⑦特定の複数の女児に対し、「ぶす」「でぶ」「ばか」などの暴言を吐いた
⑧腕組みをした状態で女児に対し指さしをし、女児が威圧的と感じる態度をとった
⑨特定の女児に対して差別的な扱いをした

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 そして、行った指導内容は以下の通りだ。

・当該職員を女子棟に入れない
・男性職員は女子の身体に触れない
・男性職員は女子の衣服に触らない  
・児童に対する言葉遣いを改めさせる
・腕組み、足組み、児童への指さしなどをやめさせる
・常に自らの養育を振り返り自尊心を高めてやるように指導する


 さらに、2023年に別の第三者からも虐待通告が行われていたことが判明した。私たちが取材した被害情報は、2013年〜2020年のものだったので、当該職員の女児への不適切な身体接触が2023年まで継続していたことを意味する。私たちが取材で得た被害に関する情報を熊本市に示した際、こども局の担当部長は「それらの情報は一定程度把握していて、指導も行っている。そこで止まったという認識だった」と答えている。熊本市が加害の疑いを把握した段階で徹底調査と対策をしなかったために、加害は止められることなく、被害は増え続けていたのだ。

 上記の行政指導は処分内容として妥当なのだろうか。ある行政関係者は「熊本市はするべきことをしていない」と指摘した。行政指導では甘い、という意味だ。