ハリスならイスラエルはどうなる?
入山 そうすると、トランプが大統領になった場合は、今の中東情勢は、さらにアメリカがイスラエルを支持するという形になりそうですよね。旦那さんがユダヤ人のカマラ・ハリスが大統領になった場合は、いかがですか。民主党というのは共和党よりはイスラエルに対してはもう少し厳しいということだと思うんですが。
池上 カマラ・ハリスのご主人もユダヤ教徒ですけど、かなりリベラルなんですね。イスラエルのネタニヤフ首相のやり方に批判的だということですから、カマラ・ハリスが大統領になれば、イスラエルという国は支持するけれども、「ネタニヤフはやり過ぎだ。もっとパレスチナ人たちの人権を考えなさい」ということになって、かなり関係が悪化するでしょうね。あるいは、ユダヤの原理主義者が「パレスチナ自治区なんかないんだ。これは全部自分たちのものだ」と言って、どんどん勝手に入植しているわけですよね。その入植を止めようという動きが起きるんじゃないか、ということですね。
入山 なるほど。これ、中東にとってはどっちがいいんでしょう? イスラエルにとっては当然、トランプの方がいいということだと思うんですけど、結構難しいところですね。
池上 実はトランプが大統領だったときに、アラブ首長国連邦などがイスラエルを国家として承認したわけですよね。つまり、もともとイスラエルとまわりのアラブの国は対立していると言われていました。イスラエルができたとき、まわりのアラブの国がイスラエルを攻撃して第一次中東戦争が起きましたよね。あのとき、イスラエルと戦った国はイスラエルを認めたくないという意識が強いんですけど、それ以外のアラブの国は関係ないんですよ。むしろ、イスラエルはIT産業が進んでいるので、アラブの国には「IT産業を発展させるために、とにかくイスラエルとの関係を改善しよう」という動きが実はあるんだ、ということですね。
入山 なるほど。だからまさに、UAEなどは傍観していて、イスラエルともっと仲良くして経済的に潤いたいという状況なんですね。
池上 さらに、サウジアラビアですら、イスラエルを国家として承認しようという動きが起きてきた。ハマスが焦って、それをぶち壊そうという狙いもあって、イスラエルを攻撃したということなんですね。それによって、サウジアラビアがイスラエルとの関係を進めようということを止めてますから、ハマスの狙いは今のところ成功しているということですね。
入山 なるほど。複雑だな。
池上 いわゆる中東問題というのは、イスラエルとアラブ諸国の対立だとは、もはや言えなくなっているということですね。