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――業界の体質そのものが変わった?

三ツ矢 そうです。僕の若い頃から声優ブームは何度かあり、当時も追っかけなどはいました。でも、2000年くらいまでの声優ファンは一部のマニアやオタクといわれる人たちで、基本的にはマイナーカルチャーだったんですよ。

 だから、声優がコンサートをしたり制作発表に出ても、今のように芸能ニュースとして扱われることはなかった。昔から不倫や結婚、離婚を繰り返したり、セクハラやパワハラをする声優もいたけれど、それもマスコミはスルーしていたんですよ。理由は、声優が〈裏方〉だったからです。

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三ツ矢さんが主人公の上杉達也を演じた『タッチ』

昔の声優は「顔を出すのは、キャラクターの裏側が見えてしまうから嫌だ」という人が多かった

――三ツ矢さんは『タッチ』や『キテレツ大百科』などの大ヒット作に出ているのに、それもニュースにならなかった?

三ツ矢 はい。1990年代頃までは声優が顔出しで活動する機会は少なく、アニメ・声優ファン向けの雑誌は別として、一般の芸能ニュースに声優の記事が載ることはまずなかった。コンサートをやっても「マニアたちが盛り上がってるな」という規模でしたよ。でも今は、新作キャンペーンで声優が顔出しするのが普通ですよね。

 昔の声優は「顔を出すのは、キャラクターの裏側が見えてしまうから嫌だ」という人が多かったんですよ。でも今は、顔出しに抵抗感のない声優が多いです。顔が出れば当然、声優の名前も知られていき、有名になってライブで武道館やアリーナを満員にすると、またニュースになり、声優の知名度はますます上がる……という構造です。

――そうですね。

三ツ矢 今の若い声優に将来の夢を聞くと、みんな「マルチに活躍したい」と言います。「マルチ」には本来の声優業だけでなく、ラジオや歌、イベント出演などの仕事も含まれますが、これは「タレント、芸能人」と呼ばれる人たちと同じでしょう?  だから、今の声優業界はもう〈プチ芸能界〉なんです。

 だとしたら、声優も芸能人と同じくらい、言動に気をつける必要がある。それなのに、その「自覚」がないのが、最近頻発するスキャンダルの根本原因だと思いますね。

©橋本篤/文藝春秋

――それはスター声優の方々もわかっているはずなのに、なぜこれほど問題が続いてしまうのでしょう。

三ツ矢 やっぱり、声優本人に「はしゃぎ気分」があるんだと思います。声優業界が〈プチ芸能界〉になり、自分自身がブームになることで、表舞台に突然持ち上げられるわけですよ。それで、舞い上がってしまうんだと思います。