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――気分が高揚するような?

三ツ矢 そうですね。スター声優になると、ファンの人たちから崇拝に近い気持ちを向けられることもあるんです。そうすると「自分からファンにアピールすることで、ファンを思うように動かせる……」という傲慢な気持ちが、どこかに生まれてしまうんじゃないかと。

©橋本篤/文藝春秋

 僕は、声優は「キャラクターあってこその裏方仕事」と思っているけれど、今の〈プチ芸能界〉化した声優業界では僕のような意見は少数派で、前にガンガン出る人が重宝されます。でもそうなったとき「言動に気をつけないと、何かあったときに、個人としてものすごく叩かれるよ」ということは言いたいですね。

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――確かに、最近の声優スキャンダルの炎上ぶりはすごいものがあります。

三ツ矢 声優は、何か問題を起こして叩かれている最中に、キャラクターのベールを被ることは絶対にできません。キャラクターは声優を守ってくれないんですよ。

 だから、僕たち声優は「キャラクターというベールを被ったうえで成り立つ存在だ」と肝に銘じて、自分が演じたキャラクターを利用してファンに特別にアプローチしたり、よからぬ行為をしてはいけないと自覚すべきだと思います。

「『ちょっとはしゃぎすぎじゃない?』とは思いました」

――古谷さんはやはり、その自覚が足りなかったと思いますか。

三ツ矢 そうですね。最初にも言いましたが、彼個人に対して、すごい憎悪や嫌悪する気持ちはないんです。ただ「ちょっとはしゃぎすぎじゃない?」とは思いました。「はしゃぎすぎて、失敗しちゃったね」みたいな感じ。

©橋本篤/文藝春秋

 本当はね、僕は「人間だからいろいろあるよね」と思うし、役者がどこから見ても品行方正な人格者である必要はないとも思ってるんです。「この先もまだあるんだから、頑張ってね」と励ましたい気持ちも、友情として残っています。バレちゃって運が悪かったね、とかね(笑)。とはいえ、彼がしたことは決してほめられないので、それは反省してくださいと言うしかないですよね。

――なるほど。

三ツ矢 彼の奥さんとはもともとすごく仲がいいので、先日「ごはんを食べに行こうね」と約束もしたんです。でも、僕も他の声優と同じようにプチ芸能人のひとりなので、今、彼のために動いたりすると、それもまたニュースになってしまう。難しい時代ですけど、ここまで注目される業界になってしまったんだから、「仕事さえきちんとやっていれば、プライベートは何してもいい」という感覚ではもういられない、ってことです。