「やっぱりこれまでのアレはソレだったんだ」――潔癖症の老人宅に派遣された、介護ヘルパーの佐東しおさん。彼女がキレイな部屋で見つけた「ナゾの茶色い物体」の正体とは…。新刊『介護ヘルパーごたごた日記――当年61歳、他人も身内も髪振り乱してケアします』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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チョコかと思ったら、やっぱりアレだった
利用者宅は「中間」が少ない。「思いっきり汚部屋」か「ほこりひとつない部屋」のどちらか。
ニギリ美子さんのお宅は立地はいい。近くに店も病院もある。部屋もゆったりとしている。だけど家賃5万円は高い。この地区では築年数の浅い、こぎれいなワンルームマンションの家賃が5~6万円ほど。長屋風の古びた建物の一部で、洗面所とトイレはあとから作ったように母屋から飛び出ている。洗面所は渡り廊下の一部のようで屋外との境は板1枚でおそろしく寒い。これで家賃5万円。身寄りのいない高齢者に家を貸す人は少なく、足元を見られているのかもしれない。
部屋はぼろぼろだけど、美子さんは潔癖症ともいえるきれい好きだ。だから、掃除も手を抜けない。一生懸命、畳の拭き掃除をしていたら(濡れた雑巾で畳を拭くことには抵抗があるが、希望する人は多い)、ときどき茶色い粘度のある粒が畳の隙間にめり込んでいる。
美子さんがチョコを食べているところは見たことがないし、これはなんだろうと思いながら、爪でかき出して片付けていた。
美子さんのベッドに敷いてあるバスタオルにも同じような茶色いシミがあった。
もしかしたら、うんちじゃないかと思ったが、認知症でなく、目もしっかり見えている、プライド高い美子さんにそんなことは言えない。
美子さん宅の茶色い何かへの疑惑を深めていたある日、入浴介助の際に浴室手前でぽろぽろとチョコボールのようなものがいくつか落ちた。
間違いなく便だ。やっぱりこれまでのアレはソレだったんだ。