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 それより、美子さんが気づいてプライドを傷つける前にどうにか捨てようと思ってあわてていると、「あらあら、うんこちゃん」あっさりそう言うと、素手で拾って、窓の外へぽいと投げる。気にするでもなく、平然としている。

浴槽の湯にぷかぷかと茶色いもの

 美子さんとは別の人でも同じようなことがあった。入浴介助時、気持ちよさそうに浸かっている浴槽の湯にぷかぷかと茶色いものが浮かんだ。

写真はイメージ ©getty

 このときも、どうにかさりげなく捨てなくてはと焦っていると、本人がすぐに気づいて、「あらら」と洗面器ですくって、排水溝に流す。そのまま何もなかったように浸かっていて、そのお湯で顔をじゃばじゃば洗っている。

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 この人もきれい好きで家にはほこりひとつない。

 利用者たちが若かったころ、シャワーのかけ湯もなかったし、幼い子が浴槽で粗相(そそう)してもお湯を入れ替えることなどなかっただろう。そんな意識が「うんこちゃん」を平気で受け入れさせているのかもしれない。