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良いプレーは口に出して指摘する

――高校生世代は多感な時期ですし、プロの集団ではない。「いい雰囲気」といっても簡単じゃないとは思うのですが。

「僕の場合“きょうはこういうことを伝えよう”と思ってピッチに入るんじゃないです。選手の表情が一様に暗かったりしたら、やりたいことの『幹』は一緒でも練習メニューも伝え方も変えていきます。だから練習はみんなの表情を確認できるボール回しから始めます。アイツきょうは乗っているな、乗ってないなとか。学校で何かあったのかもしれない、アイツは注意深く見ておこうとか、しっかり観察します。練習を始める合図でピッと笛を吹くまでみんな座ってしゃっべているとか、そうなるとちょっと考えますね。やらされるんじゃなくて、自分で踏み込んでいくパワーというのがないとそういう雰囲気は出ないので」

©末永裕樹/文藝春秋

――観察の部分において良いプレーをしっかりと指摘することに重点を置いていると、うかがいました。

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「良くなっている部分を口に出して言ってあげると、選手も“そこまで見てくれているのか”って思うわけです。それもより細かいところまで。普通、(ゲーム形式の)トレーニングで笛を吹いてプレーを止めるときって、良くないシチュエーションのときだと思うんです。でも僕は、良いシチュエーションでも止めちゃいますね。敵陣でこういういいパスが入って、そこから奥に行って、次の選手が前を向き、ワイドにいる選手もかかわったから相手のディフェンスラインが開いてこのチャンスが生まれたんだ、これはもう最高のプレーだよ、と。止めちゃってゴメンとも言いますけれど(笑)」

©末永裕樹/文藝春秋

――良いものは良いと、その時点で言ってあげる。

「良いところも含めて全部見ているから、今度、悪いプレーで指摘しても選手はすんなり受け入れられると思うんです。これは現役時代の自分がそうでしたから。一方でミスをえぐることも大事です。ラインを上げるのが遅いぞ、体の向きがおかしいぞ、ここの球際で負けているようだったら次はもうないぞ、とか。強い心を育む、忍耐力をつける部分においては、厳しく言う必要もあります。両方のバランスを取りながら、ですね。選手とそういう関係を築くことができたら、今度は何も言わなくても名前を呼んだだけで気づくようになります。試合になれば監督の声なんて聞こえないわけですから、あうんの呼吸が生まれて勝つチームになっていくんだと僕は思っています」