FC東京は若い芽を着実に育てている。

 昨年11月に高校1年生の久保建英、高校2年生の平川怜がFC東京U-18から昇格し、今季から原大智、品田愛斗もトップチームの仲間入りを果たした。近年においても波多野豪、岡崎慎ら「U-18」昇格組が激増している。

 粒ぞろいのトップ昇格もさることながら、チームとして結果を出してきた。

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 昨年、高円宮杯U-18プレミアリーグEASTで初優勝を果たし、チャンピオンシップも勝って“高校年代最高峰リーグ”を制している。

 チームを率いるのが43歳の佐藤一樹監督である。現役時代、快足を誇るサイドのスペシャリストとして活躍しながらも、決して陽の当たるプロ人生だったわけではなかった。横浜フリューゲルスを皮切りに9年間で7クラブを渡り歩いた苦労人は多くの指導者、多くの人と出会ってきたことを財産に、「全体がギラギラしてサッカーに取り組む雰囲気づくり」にこだわっている。

 会話し、観察し、心と心で触れ合う。組織ごとにヤル気にさせる、彼独特の指導法とは――。

佐藤一樹監督 ©末永裕樹/文藝春秋

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「いい雰囲気」とは何か?

――ユース(U-18)チームの監督として求められるのは、一般的にどれだけ多くのタレントを育ててトップに上げていけるか。FC東京U-18を見ていると、個よりもまず組織の引き上げが先にあるように思います。

「考え方としては健全な組織と言いますか、エネルギーに満ち溢れた集団に入れて個を伸ばしていきたいというのがあります。全体のレベルが高いなかで、抜きんでる選手が出てくることを模索したいですね。抜きんでる個が次々に出てくれば、選手たちは“俺も、俺も”ってなるわけじゃないですか。そういう雰囲気をつくりたいと思ってやっています」

――「いい雰囲気」を定義づけるとすると。

「選手が早くピッチに出て、サッカーをしたいという雰囲気ですね。ボールをずっと触っていたい、ピッチから離れたくない、そんな雰囲気でしょうか。選手だけじゃなくスタッフも」

――スタッフも?

「選手というのは、スタッフを凄く見ているんです。スタッフにヤル気がなかったら、ギラギラする雰囲気をつくれません。スタッフにもそれぞれストロングポイントがあるので、彼らの能動的な雰囲気も大切になってきます」