子供の頃からリストカットと薬の過剰摂取、自殺未遂を繰り返してきたという麻衣さん(仮名・21)。15歳で売春を始め、新宿の立ちんぼとして生きざるを得なかった彼女の背景には一体何があったのか。アームレスリング世界王者で5児のシングルマザーの山田よう子さんと歌舞伎町で出会い、真っ当に生きようともがく麻衣さんの体験談を通して考える、学校にも家にも居場所がない子供たちに“一番必要なこと”。(全2回の後編/前編を読む)

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右が山田よう子さん ©深野未季/文藝春秋

メンタルの病いを抱えて実家暮らし

——今もご実家にお住まいですか。

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麻衣 はい。自分、メンタルがヤバすぎて、薬の管理とか一切できないんですよ。お金の管理も。本当に酷い時は鬱になって、ご飯も食べられないし、風呂も入れないし、何もできなくなる。自分は双極性障害というか、いわゆる躁鬱病なんです。ハイになった後は、大体気分が落ちるんです。そうなる原因は環境変化とか、ちょっと嫌な出来事があったとか、そういうことが多いです。

——今もご両親に暴力を振るわれているんですか。

麻衣 一回、本気で殴り返して、ボッコボコにしちゃったんで、もう大丈夫です。

——父親を? 母親を?

麻衣 両方です。それでもう絶対に手は出してこなくなりました。「一緒に頑張ろう」とか口では言うくせに、この間また父親に怒鳴りつけられて、腕を切ってしまいました。

——ご両親は根本的には変わってない?

麻衣 多分、仕事のストレスとかが相当溜まってるのかな。自分も、ADHD(注意欠陥・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)を持ってるので、普通の人とはちょっとかけ離れてる部分があるんだと思います。「お前は普通じゃないんだから」って怒鳴られるから、「普通って何だよ」ってキレ返したり。自分からしたら、腕を切るのも普通だし。親には、「だから、1人暮らしなんかさせられない」「まともじゃない」「頭おかしい」とか言われます。

©深野未季/文藝春秋

——1人暮らしをしたいという気持ちはありますか。

麻衣 あります。だけど、今の状態じゃできないのは自分でもわかっていて。本当にダメな時は3週間以上動けなくて、ご飯もエネルギーゼリー飲んで終わり。食べても飲んでも吐いてしまう、3週間で体重が6キロ落ちるレベルで病むんです。

——弟さんも同居されているんですよね。

麻衣 5歳下なので、今、高校1年生です。弟はいまだに殴ってきますよ。テニスラケットとかで。この間、弟と喧嘩になって、でもパキってるから力が入らなくて、弟に救急車を呼ばれて簀巻きにされて病院に運ばれました。