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養護教諭になる夢

——人の話を聞くのが得意なんですね。

麻衣 得意なほうです。このままこの仕事を頑張って、4月から看護学校に通って、看護師の資格を取りたいなと思ってるんです。手に職をつけたいし。さらに希望を言うと、教員免許を取って、養護教諭になりたいな。中学生時代、実際に元看護師の養護教諭がいたんですよ。中2の時に赴任してきて、よく話を聞いてもらいました。腕の傷もよく手当てしてもらったりしたので、忘れられないです。

©深野未季/文藝春秋

——生き辛さを抱えている子供に寄り添いたい?

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麻衣 きれいごとを言うようだけど、自分みたいな子たちを少しでも減らしたいと思っているんです。こんな自分の体験を踏み台にして、少しでもいい方向に進んでもらえれば。自分の両親も言っていましたが、学校の先生になるのに、優等生は向かないんじゃないでしょうか。優等生側の気持ちしか想像できないから。中学生の自分が本気でメンタルを病んで、男子と喧嘩した時、いろんな経験をしてきた技術の先生は「ヤバいな」って思ったらしいですけど、優等生学年主任は何て言ったと思いますか? 「幼いだけでしょ」って。きれいな世界しか知らない人の言うことは説得力がないです。

心の居場所をつくってくれたママのように

——麻衣さんは、どうしてほしかったですか?

麻衣 ちょっとでいいから、話を聞いてほしかった。「大丈夫?」じゃなくて、「どうしたの?」とか、そういう聞き方をしてほしかった。大丈夫じゃないから、咳止めと抗ヒスタミン薬を交ぜてガブ飲みして、死にかけているんですよ。「大丈夫?」「何でそんなことしたの?」ってグイグイ来るんじゃなくて、「話聞こうか」ぐらいの感じで、寄り添ってくれたら嬉しかったです。

©深野未季/文藝春秋

——山田さんの他に、立ち直るよすがになる人はいますか?

麻衣 すごい努力家の親友がいるんですよ。最近会って話を聞いたら、大学で論文の執筆に追われているって。それで、自分も頑張ろうと思いました。でも、ママの存在が一番大きい。一緒にいるとすごく安心できるし、エネルギーをもらえるんです。リストカットに関しても、するなって言うんじゃなくて、しなくて済む環境を作ってあげたいって。

——山田さんの影響で、アームレスリングに興味を持たれたとか。

麻衣 自分もアームレスリングの大会に出たいと思って、筋トレを始めました。いつかママと同じ大会に、素人の部で出られたら嬉しいな。ママと出会ったことで、自分の人生は変わりました。ママが心の居場所を作ってくれたからこそ、自分も強くなって、ママみたいに周りに笑顔を届けられる人になろうと思えたんです。

撮影 深野未季/文藝春秋