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荒木 井上雄彦さん、すごいですよね。

増村さんに匹敵するのは今のところ井上さんのみ

原田 すごいですよ、そのつかまえ方、人の見方。いま、(実写の)俳優や監督はそれをやってないような気がするんです。悔しいですよ、自分は俳優なので、アニメを誉めたくないんですけど(笑)、すごいんだもん。あれは世界中の人が面白いと思いますよね、気持ちのいいところに全部入る。すぽんすぽんって。音も編集もめちゃくちゃうまいですよね。たくさんのひとたちを使ってやっていて、それをひとつにするには井上さんの中できちっとしたものがないとズレていくわけじゃないですか。だからすごい監督だと私は思います。なんだか増村さんの話のはずが井上さんの話になっちゃって(笑)。

提供:一般社団法人PFF

鶴岡 増村さんに匹敵するのは今のところ井上さんのみということですね。

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荒木 原田さんが井上さんを熱く語っているだけで嬉しいです。

原田 黒澤さんがよく言っていたのはね、助監督さんたちが集まってあの映画つまらなかった、この映画つまらなかったと映画の悪口を言ってたんですって。それを黒澤さんが聞きつけて、君たちね、他人の悪いところはいくらでも見つけられるんだよ、いいところを見つけられなかったら自分は伸びないよ。どんなにつまらない映画でもひとつはいいところがあるはずだからそれを見つけてごらんなさいって言ったんですって。いいところを見つけるというのは、いいというセンスとか見極める目線を育てることになるんですよね。悪口は簡単ですよね。あいつひどい芝居だなとか年取ったなとか、そういうこと言われてると思うんですけど(笑)、それは誰でも言えること。でも、本当にいいことを見極める目は、自分を磨いていかないと育たないと思うんです。ご飯食べておいしければ、何がおいしいのかな、ここがおいしいから今度作ってみようかとなるじゃないですか。いいところをつかむ、引き出す。いいところをどんどん見つけて自分の目を磨いていってほしいと思います。

(9月10日東京・京橋の国立映画アーカイブにて。掲載に当たり加筆しました。文責:編集部)