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荒木 黒澤さんはいつもいつも映画のことを考えてるんですね。

黒澤明監督 ©文藝春秋

原田 そうですね。頭の中にいつもある。

荒木 鶴岡さん、今の時代に俳優さんにそういうこと言える雰囲気ないですよね。

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鶴岡 まったくないですね。早く撮り終わる、一日これだけのシーンを消化するんだぞという感じです。

提供:一般社団法人PFF

原田 そこがやっぱり難しいところですよね。黒澤さんは俳優はすぐにできないとよく知っているのでリハーサルに時間をかける。その間に、衣装やメイクや鬘がなじむ時間をつくる。だから本番は午前中に撮れたりする。(監督に)作りたいビジョンがあって、ここまでやりたいという気持ちに、じゃあそこまでやりましょうと皆が思うかどうかだと思うんです。今は(デジタルで)どんどん撮れちゃうしどんどんNGだしても平気だから、なかなか緊張感をつくれない。やっぱりすごいエネルギー量をかけて撮ったものは、何年たってもその画面にエネルギーが映しこまれているように思うんですよね。いまは町の中にも電車の中にもありとあらゆる映像があふれていますけど、瞬間的に見ると素敵なんだけれど、すぐ忘れちゃう。記憶できるほどの映像はなかなか作れないですよね。今の若い人たちに黒澤組を体験させてあげたいし、自分も「明日から黒澤組の撮影」って言われたら「はい!」ってすぐ行っちゃいますね。

提供:一般社団法人PFF

ワンカットだけでも記憶に残る映画はできる

荒木 高いところにみんなで上がろう、これを実現しようという空気があれば俳優さんは絶対に行く。

原田 そうですね。ワンシーンでもいいと思うんですよ。このシーンだけは絶対に譲れない、あとは予算とか考えて流してもいいけど、ここだけは撮りたい、というのでもいいんじゃないですか。ワンカットでも記憶に残る映画になると思うんです。自分の中でこうしたいと感じたことは絶対譲らないで撮るとか、あと偶然撮れちゃうこともあるんですけど、そういうのは映画の神様がふっと降りてくるときだと思うんですよね。

荒木 原田さんから映画の神様という言葉が出てとても感動してるんですが、映画の神様ってぜったいいますよね。