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 選択意識が強い女性ほど、夫から殴られても「自分が選んだ夫だ」と事態を甘受しがちだ。外から見ればDVそのものなのに、女性の側がいっこうに逃げようとしない背景に、このような自己責任の意識が働いている場合がある。

 ところが不思議なことに、このような責任意識は男性にはほとんど見られない。僕が妻を選んだのだから、何があっても自分の責任だと語る男性にはほとんど出会ったことがないのだ。

©Aflo

自分を追い込んでいく「自己責任」という言葉

 自己責任という言葉は、新自由主義的な政策の背景となっている。低成長時代に入った日本が、「自由に職業を選べる」ことを謳い文句として、何種類もの非正規雇用の形態を創出したことはよく知られている。

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 多様な選択肢の中から一つの仕事を「選んだのはあなただ」「だからすべてあなたの自己責任だ」とされるのは、正規雇用者ではなく、たいてい弱者の側である非正規雇用者だ。もっとも弱いひとたちが、「選んだ私が悪い、文句は言えない」と自分を追い込んでいくのが自己責任という言葉だ。

 2000年代に入り、ネット上では「人のせいにするなんてずるい」「自分が悪いんじゃないの」という弱者どうしの足の引っ張り合いも生まれた。自らのことを被害者と思えない女性たちも、このような自己責任論の延長でとらえる必要があるのではないだろうか。

※夫婦カウンセリングの落とし穴や、夫婦間の力関係などについても解説する全文は、発売中の『週刊文春WOMAN2024秋号』で読むことができます。

のぶたさよこ/1946年岐阜県生まれ。お茶の水女子大学文教育学部哲学科卒業、同大学院修士課程家政学研究科児童学専攻修了。駒木野病院勤務、CIAP原宿相談室勤務を経て1995年原宿カウンセリングセンター設立、現在に至る。