27日から公開となる『SUPER HAPPY FOREVER』は、『泳ぎすぎた夜』で欧米でも知られる五十嵐耕平監督の新作。この作品は「自分たちで映画を作りたい」と考えた俳優二人が、五十嵐監督に送った一通のメールからスタートした企画だった。

『SUPER HAPPY FOREVER』©2024 NOBO/MLD Films/Incline/High Endz

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「ボナセーラ(こんばんは)。宮田を演じた宮田佳典です。私はSUPER HAPPYです!」

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 開口一番、俳優の宮田はイタリア語と英語を織り交ぜ、場内を和ませた。

「(主演の)佐野弘樹と二人で五十嵐監督に声をかけ、映画を一緒に作ろうということになりました。監督とは6年間ずっと話し合い、自分自身のことも色々と話してきたので、それがストーリーに生かされたと思ってます」と語った。

ワールドプレミアのQ&Aでの五十嵐耕平監督(中央)と宮田佳典さん(右)

 一方、五十嵐耕平監督は「今日は来て頂いて有り難うございます。SO HAPPY、SUPER HAPPYです」と英語で挨拶。インパクトのあるタイトルについて質問が飛ぶと、「一番シンプルで、強いタイトルを探しました。そこから入って、複雑なことについて考えたかった」と説明。また、コロナ禍を挟み二つの時間が流れる大胆な構成については、「5年前と現在の間で、変わったことはそれほどないと思うかもしれない。でも、失われたものがあり、全てが変わったとも言える。そのことを強調するため前後に分けました」と答えた。

満席の会場はスタンディングオベーション

 日仏合作映画の『SUPER HAPPY FOREVER』は、81回目を迎えたヴェネチア国際映画祭(8月28日~9月7日)のGiornate Degli Autori(“映像作家の日々”の意)部門に登場。監督の五十嵐耕平は、2017年にフランス人ダミアン・マニヴェルとの共同監督作品『泳ぎすぎた夜』をオリゾンティ部門に出品しており、本映画祭への参加は2度目に。

『SUPER HAPPY FOREVER』ポスター

 Giornate Degli Autoriはこの世界最古の映画の祭典で、独創的な映画表現を奨励する部門。ヴェニス・デイズという名で広く認識されている独立セクションだ。カンヌ映画祭の監督週間に近い立ち位置を目指し、2004年に発足した比較的若い部門で、公式招待作品に対するカウンター的な役割を担う。これまで日本映画はオダギリジョー監督『ある船頭の話』(2019)、大塚竜治とホアン・ジーの共同監督『石門』(22)、杉田協士監督『彼方のうた』(23)など、個性豊かな作品を紹介してきた。