2018年に亡くなった後も、多くの人々に愛され続ける女優の樹木希林。2018年の映画『モリのいる場所』で共演し樹木さんの“最後の愛弟子”とも言われるのが、俳優・吉村界人(31)だ。ネットフリックスドラマ『地面師たち』の演技も注目を集める吉村に、樹木さんの七回忌に寄せて、秘話を明かしてもらった。
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最初の印象は「品のいいご婦人」
――最初に樹木さんにお会いしたのは、映画『モリのいる場所』の撮影現場だったそうですね。樹木さんは熊谷守一の妻を、吉村さんは熊谷守一に密着するカメラマンの助手を演じました。
撮影前、最初にご挨拶した時の印象は、「品のいいご婦人」。大御所俳優さんとご一緒する現場はほぼ初めてだったので、緊張しました。樹木さんが現場にいると、それだけで“そこにいる力”みたいなものを感じました。経験や年齢だけではない説得力というか……。とにかくすごくて、「どうなってるんだろう?」と思いました。
――年齢も離れているお二人。どんなきっかけで仲良くなったんですか?
撮影の合間に樹木さんが、「あなたジュリー(沢田研二)に似てるね」と声を掛けてくださったんです。僕はジュリーさんの曲はあまり知らなくて、「そうなんだ」という感じでしたが、樹木さんは「ちょっと話そうよ、話そうよ」と。そこからですね。
――そうだったんですね。
実は僕、その撮影の初日のテストで台本には書かれていないことにトライしたんですが、それで共演している俳優さんを怒らせてしまい、撮影が止まってしまったんです。スタッフも他の共演者の方も誰も何も言わない気まずい雰囲気の中、樹木さんだけが隅の方でケタケタ笑っていたんです。目があって、僕もそっちのほうへ歩いていって、「まずかったですよね」と言うと、「界人くん、トライはいいけど、あれはまずかったね」「あれは私も助けられません」って(笑)。
――そういう時は、声を掛けてくれるだけでもありがたいですね。
はい。樹木さんは落ち込む僕を見て、「まあちょっとお菓子でも食べようよ」って誘ってくださって。「まあでも、いろんな俳優がいるわよね」というところから、いろいろなお話を聞かせていただきました。樹木さんが若い頃の話で、「松田優作さんの舞台を観に行った時、あんな汚い格好して売れるわけないと思ったけど売れたわね、人生何が起こるかわからないね」とか、最近会った若手俳優について、「姿勢がカッコ悪いのよ」とか歯に衣着せぬぶっちゃけ話を(笑)。