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樹木希林の“最後の愛弟子”とよばれて

――樹木さんが期待を寄せていたことから、“最後の愛弟子”とも言われています。

 いや、弟子っていうわけでもないしな~とは思うんですが(笑)、でも光栄だと思っています。あんまり恥ずかしいことできないな、とも。かといって別に僕は樹木さんの家族でもないし、友達っていうのもおこがましいから、何かを背負ってるつもりはないです。

――樹木さんと過ごす中で、触発されたことはありますか?

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 この時代、言いたいことを言うのって、楽じゃないじゃないですか。でも、樹木さんを見ていたら、「自分で責任を持てるなら、言いたいことを言ってもいいのかな?」と思えてきました。今こういう時代って、冗談のつもりで言ったことが通じないとか、みんなと違う意見を言うとそっぽを向かれるとか、そういうこともあるじゃないですか。僕はそんな度胸もないし、人と違ったことをバンバン言いたいというわけではないけれど、今こういう時代だからこそ、樹木さんのような考え方の人がいてもいいんじゃないかなって。

本人インスタグラムより

――みんながみんな同じ方向を向くのではなく。

 責任を取れる範囲なら、「右向け、右」に従ってばかりじゃなく、左を見たり、上を見たり下を見たりしている方が面白いんじゃないかって思います。そういえば樹木さんに、「俳優をやっていきたいなら、不動産系を固めた方がいいわよ」って言われたんです。「自分がやりたいことをやって、言いたいこと言うためにも、お金で苦労しちゃいけない。だから不動産をまずは手に入れなさい」と。樹木さんは家に帰ると自分でお金の計算もするらしく、「それが結構楽しいんだよね」とも言っていました。

――なるほど。

 あとは、樹木さんは「一人でいなさい」みたいなことを言っていた気がしますね。全部満たされてる人が何をやっても、あんまり心って動かない。売れて評価されれば必然的に満たされていくけれど、表現者である以上、そこから自分で遠ざからないといけないと……。でも、こうやって亡くなった後に、僕が樹木さんの言葉を真剣に考えてるのって、何て言うのかな、恥ずかしくなるというか……。多分、樹木さんは恥ずかしがり屋だし、僕がこんなことを言っているのを見たら、「いや別に何も考えてないんだよね」って言われちゃう気がします。「うるさいわね~、そんな買いかぶらないでくれる?」って(笑)。でも、そういう樹木さんが愛くるしいな、と思います。