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草彅はこちらの目をまっすぐに見つめて…

 楽屋でこのセリフを言ってもらえないだろうかとお願いしたとき、剛さんはこちらの目をまっすぐに見つめて、静かな口調で、

「わかった」

 とひとこと答えてくれました。そのときの剛さんの澄んだ目の色を、僕はいまも忘れられません。

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 あのひとことを公の場で口にさせたこと。彼に背負わせたこと。僕らスタッフも罪悪感を抱いていました。

 SMAPが解散したあと、僕は幸い稲垣吾郎、香取慎吾、草彅剛による「新しい地図」とともに仕事をする機会を得られ、関係が続いてきたのはありがたかったです。

 そして何よりうれしかったのは2021年、映画『ミッドナイトスワン』で剛さんが日本アカデミー賞最優秀主演男優賞をとったことでした。トランスジェンダーの難しい役柄を演じて受賞したことには、心が震えました。やっぱり彼はやるときはやる、状況をみずから突破していくのです。飄々としながら、だれよりも力強く歩みを進めていきます。

鈴木おさむさん ©文藝春秋

とことん、つくり手に愛される演者

 僕が放送作家をやめるタイミングでは、「新しい地図」の番組で「さよならスペシャル」を放送してくださいました。そのとき剛さんは僕の引退について、「本当に残念だ……」としみじみ言ってくれて、それが心に沁みました。それで罪悪感が払拭できたわけではありませんが、すこし救われた気分になれたのもたしかです。

 草彅剛さんはとことん、つくり手に愛される演者だと感じます。どんな高いハードルを設定しても、いつも軽々と越えてくるのが草彅剛なのです。ならばもっといい構成や演出をぶつけようと、制作側も燃えに燃えて、結果としていい作品が生まれてくるわけです。

 剛さん自身はどんな状況に陥っても、だれと向き合っていても、自分を抑えたりねじ曲げたりはせず、いつだって我が道を突き進んでいきます。いつも「変わらない人」でいることによって彼が台風の目のようになって、まわりの人間を巻き込み惹きつけながら、その場にとてつもないパワーを生み出すのですね。