2017年、37歳のときに妻と離婚した、浄土宗・龍岸寺住職の池口龍法さん。離婚して間もない頃に、まず直面したのが「子どもたちの心のケア」について。小学生2年生の長女と幼稚園年長の長男――子どもたちに“母との突然の別れ”はどんな影響を招いたのか? シンパパ住職の奮闘記を綴った新刊『住職はシングルファザー』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

写真はイメージ ©getty

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 離婚してまず向き合うべきは、子供の心である。

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 私の心ももちろん疲弊していたが、「苦しみは糧にすべきものだ」という理解があるだけで気分に余裕があり、メンタルを病みそうな気配はなかった。

 しかし、子供の心には、そんな余裕はない。

 子供は、寝食をきちんとしていればそれなりに体は大きくなっていくが、心はひとりでに育まれてはいかない。夫婦仲が荒れていれば、子供の心はその影響をもろに受けてしまう。離婚というのは、大人よりもはるかに子供にとって過酷なものだろう。

2017年からシングルファザーになった池口龍法さん(撮影:新潮社)

 離婚した時点では、私の子供2人の心はまだまだ幼かった。

学校に行きたがらない長女

 まずは小学2年生の長女。

 幼稚園から小学校にあがると、学校の宿題も翌日の授業の準備も、ひとりでできるようにならなければならない。朝は集団登校で出かけても、帰りはひとりで家まで帰ってこなければならない。つまり、親の助けを借りずとも、身の回りのことは「ひとりでできる」という感覚を身につけるのが、小学生になって必要とされることである。

 しかし、娘はどうだったか。夫婦喧嘩に疲弊した両親にかまってもらえないせいで、生活がグダグダになってしまっていた。お風呂にも入らず、リビングで寝落ちしてそのまま朝を迎えることもよくあった。乱れに乱れた生活では朝もうまく起きられない。着替えぐらい年齢的にはもう自分だけでできて普通なのに、親が脱がせて着せてあげないといつまでもパジャマ姿。当然、宿題が終わっているはずもない。もたもたしているうちに、「ピンポーン」と集団登校班の呼び鈴が鳴る。その音は娘を怯えさせるだけで支度を急かす効果はなく、「すみません、今日も先に行ってください」と答える毎日。