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「昔は300人、住んでいて賑やかだったんだが、本当に寂しくなってしまったよ」
平家の落人、竹細工の職人ということで、他の村との間に差別はあったのだろうか。
「そんなことはなかった。みんな仲良く暮らしていたんだよ。水上には保見姓が多くてな。戦後になってプラスチックの製品が出回るようになると、竹細工で食えなくなって、山を下りて来たんだよ。金峰に行ったものや、奥畑に来た者もいる。中には村会議員を務めた立派な人もいたんだよ」
古老は差別に関してはきっぱりと否定した。保見の一族は、平家の落人であり、生業が不振となると、近郷の集落へと下りてきて、新たな生活をはじめたのだという。
800年の時を超えた「因縁」
郷集落の人間から、保見の父親が怠け者と見られたのは、生業を失い、新たな仕事をなかなか見つけることができなかったことが、背景にあったのではないか。
同じ中国地方を舞台として、村に流れてきて落ち武者が村人たちに騙され落命したことから400年にわたって呪われた映画『八つ墓村』、この事件が現代の八つ墓村と呼ばれた背景には、400年ならぬ800年の時を超えた、因縁があったのである。ただ、土俗的な匂いが濃厚に漂ってくるこの村も五指に満たない村人しかいない状況の中で、いずれ消えてしまう運命にある。