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「#限界コスメ」「人類モテ」……コスメ事情から見えてくる、オタク女の変化とは

『浪費図鑑』(劇団雌猫)

2018/05/19
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なぜ「#限界コスメ」が流行したのか?

 もちろん、「純粋に趣味の話だけで互いを評価したい」という気持ちもわかります。しかし、私自身がオタクとして過ごしてきたなかで、その同調圧力には、いわゆる「一般人」「リア充」への反感が含まれているようにも感じていました。だからこそ、“限界”という自虐は込めながらも、自分が使っているコスメを互いにおすすめしあうという光景には、そうした自意識からのいくばくかの解放が見られ、風通しがよくなったように思えたのです。

©iStock.com

 一体、こうした変化はどうして起きたのでしょうか? 

・オタクの数が増え裾野が広がった結果、従来の“オタクの自意識”に囚われすぎず、オタク趣味もファッションも、両方気負いなく楽しめる層が増えてきた

・もともとジャニオタなど、「現場」のあるオタクはおしゃれに対する意識が高かったが、2.5次元舞台ブームやアイドルブームの結果、現場のあるオタクジャンルが増え、そのことが目立つようになってきた

 といったあたりも大きいのですが、ここ数年のTwitterを見ていると、こうした“オタクの美意識”にも影響を及ぼしているだろう、ある事象が生まれています。

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 それが「美容・コスメ垢」の台頭。

「美容・コスメ垢」という言葉をご存知の方はどのくらいいるでしょうか? ざっくり言うと、「美容アイテムやコスメの最新情報をつねにキャッチし、TwitterやInstagramといったSNSで、その使用感をレポートしているアカウント」の総称で、中には、個々のアイテムの売上を大幅に変動させるような、インフルエンサーも存在しています。

 たとえば2017年11月には、「ローラ・メルシエ」というブランドの「ホイップトボディクリーム アンバーバニラ」がとてつもなく売れる、という出来事がありました。なんと売上が従来の4.7倍になったのだとか。猫川舐子さん(@namekonekokawa)という方がこのアイテムを「人類モテ」と称したツイートが、2万5000RTされたためです。

「人類モテ」という言葉は爆発的にひろまり、次第にローラ・メルシエ公式が、プロモーションツイートで使用するほどになりました。こうした特定のインフルエンサーのツイートがバズる例もあれば、美容・コスメ垢間の口コミがちょっとずつ伝播していって、コスメが売れる例も非常に増えています。SNSで話題になっていたアイテムを百貨店に買いに行くと、「その色はもうないんですよ〜。なんか、SNSで話題になったらしくて」と申し訳なさそうに謝られる、なんてこともしばしばです。

 そうして、ちょくちょくコスメ垢のツイートを眺めるようになって気づきました。この人たち……めっちゃオタクなのでは!?と。