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CHICCA事件とは何だったのか?

 それは10周年を記念した限定セットの発売の際に、CHICCAのアカウントをフォローしたうえで「特定のインスタグラマーがあげている写真を見た」と報告すると1週間早く先行予約できるというキャンペーンを行なったため。

 そのことが全体で周知されているならともかく、キャンペーンの存在を知ることができたのは、もともと対象インスタグラマーをフォローしていた人だけ。限定セットを手に入れることを心待ちにしていた人ほど「メルマガも公式LINEや公式SNSもチェックしていたのに、ひどい」と怒り悲しんでいました。インフルエンサーのみを意識して、消費者の購入体験をないがしろにするマーケティング方法は、ブランド価値を毀損し、ファン離れを起こす可能性すらあるのです。

©iStock.com

 そうした、自分の基準で良し悪しを判断し、自分のためにめいっぱいコスメを楽しむコスメオタクたちが姿をあらわし、そのオタクぶりに感化されるようになって、それ以外のジャンルのオタクたちも「おしゃれ」の話をしやすくなったのが、2018年のインターネットなのではないかと、私は考えています。

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 各ブランドが行っている「無料刻印サービス」を利用して、自分の推しているアイドルの名前を口紅に刻印するなど、コスメそのものを自分の「オタク愛」の表現に使っている人も増えています。

 

 さる4月には、劇団雌猫でも「コスメやファッション、美容もある意味オタクジャンルの一つ!」というコンセプトでトークイベントを開催しました。開催する側からすると「世の中美容情報がわんさかあふれてるから、一般人の主催では誰も来ないのでは……?」という気持ちもありましたが、チケットは即日完売。当日は150人以上が会場に集まり、登壇したゲスト(もちろん全員オタク)が語る「忙しいオタクでも今すぐできる美のルール」や「好きなアイドルのコスチュームをうまく自分のファッションに落とし込む方法」といった、オタクならではのおしゃれレクチャーに聞き入っていました。

4月21日のトークイベント

 イベントの感想でも聞こえてきたのは、やはり「宣伝、広告がからまないコスメ情報が知りたい」という声。インフルエンサーマーケティングが全盛の世の中だからこそ、女子たちは、より実感があって熱量のある情報を求めて、信頼できる「普通の人」を探し、日々TwitterやInstagramを眺め続けるのです。

 そうした探究心がどうして持続するかといえば、それはやっぱり、「他人のため」ではなく「自分のため」を第一に、化粧を楽しんでいるから。自分に合った最高のコスメに出会えたときの快感は、まるで新種のポケモンを見つけたかのような喜びなのです。

 そうして今日もドラッグストアと百貨店は、自分だけの相棒――ベストコスメを追い求めるオタクたちであふれているのです。