「モテ」を目的としないコスメ道
なぜ彼女たちは、そうまでしてコスメ道を邁進するのか? それは決して「モテ」だけのためではありません。「他人のため」であれば、自分が可愛く見えると思うメイクの組み合わせを2~3セット見つけてしまえばいいだけのこと。しかし、彼女たちは、新商品が出るたびに吟味し、口はひとつしかないというのに口紅を何本も買い、他人から見たら同じ色に見えるアイカラーを何種類も買い続けます。
日によって使い分けたり、重ねづけして異なるニュアンスを楽しんだり、肌質や肌色に合ったアイテムを探し求めたり、好きなブランドの新商品はどうしても試さないと気がすまなかったり……。よりかわいく、より自分に合ったメイクの追求に余念がないさまも完全にオタク。「このギラギラしたラメに萌えるからこのシリーズ全部買う!」「限定パッケージが可愛すぎるから集める!」というふうに、“収集欲”にドライブされている人も多く、その姿は、まるで「ポケモン図鑑」を埋めていくかのようなストイックさです。
最近は、オタクとしての萌えツイートと、コスメツイートを交互に行なっているようなアカウントも珍しくありません。たとえば、資生堂の口紅「ピコ」と「名探偵コナン」の映画の値段を比較しているツイートも。
「そうは言っても、お金をもらってツイートしているインフルエンサーも多いし、みんな結局ファッション誌やメーカーのSNS戦略に踊らされてるんでしょ?」と考える人もいるかもしれません。
もちろん、ここ数年の化粧品業界のSNS戦略の発達がめざましいのはたしかです。先ほどの「人類モテ」の件もそうですし、SNSや口コミサイト「@コスメ」の投稿を研究し、即座に自社プロモーションに転換しているメーカーはとても多いです。百貨店の店頭ですら、「@コスメランキング1位!」などと喧伝しているハイブランドもあります。全国百貨店売上高が軒並み落ち込んでいるなかで「化粧品」部門だけが売り上げを伸ばしているのも、こうした戦略の成功が理由のひとつと言われています。
「コスメオタク」に愛されるブランドが炎上
しかし、あちらこちらに「マーケティング」が隠れたこの時代、消費者だってバカではありません。SNSでのコスメプレゼントキャンペーンなどにうまく乗りながらも、先方に消費者を軽く見たような態度があれば、すぐに踵をかえすシビアさを持ち合わせています。
最近の例でいうと、「CHICCA(キッカ)」というブランドが炎上した事件がありました。CHICCAは、各国「VOGUE」のカバーメイクで知られる世界的メイクアップアーティスト・吉川康雄さんがブランドクリエイターをつとめるブランド。ツヤ感のあるナチュラルな素肌を実現してくれるベースアイテム、もともとの顔立ちや血色感をひきたててくれるポイントメイクが人気で、それこそ「コスメオタク」に愛されているブランドです。
そんなCHICCAが、なぜ炎上したのでしょうか?