ドラマはチームで作るものなので、演出家と脚本家がどちらも面白いと思うものがベスト。実際の判例で合致した中から選んでストーリーにはめていく作業でした。全体の軸になるストーリーと構成はおおまかにできていたので、それに合う事件を探すという進め方ですね。
ストーリーは「ここで女子部は終わり」「ここでは梅子の背景を描く」などと、人間ドラマでやりたいことベースで決め、そこに合う事件の判例を入れなきゃいけない。いろんな差別や偏見――寅子が明律大の女子部に入らなかったら知らなかった人たちや、知らなかった価値観・考え方を学んでいくことが、寅子の糧になる。その過程を見せられたら良いなと思いました。
女子部の“魔女たち”はスーパー戦隊もののようなイメージで
第1週から第6週までは、既にほぼ解決している差別や分かりやすい差別を扱いました。寅子が明律大法学部で出会ったのは、梅子や華族の涼子など、「家制度」や身分・立場に縛られてきた人たちや、「女性」性が背負うものから逃れたい“よね”、生まれた国が異なる香淑、同性である親友に思いを寄せる轟、のちに法としてのルールと人としての道の乖離(かいり)に苦しむ花岡など。いろんな家庭環境やいろんな属性、セクシアリティの問題などがありました。
私はアニメーションの脚本を手掛けてきたこともあって、よく「(秘密戦隊)ゴレンジャー」のシステムを思い浮かべるんですね。スーパー戦隊などでよくある、レギュラー5人と、後に加わるホワイトとブラックを含めた7~8人が限度かなという想定で。最初に女子部と花岡、轟を考え、そこに玉ちゃんや優三を含めたくらいの人数ならば、人物一人ひとりを深掘りできると思いました。
一方、寅子の親友でありその兄と結婚する花江は、朝ドラの主人公にもなりうる人物なんですね。法曹界の改革を支えた人とも言えるし、朝ドラの定番の一つである何かを成し遂げた人物を支える奥様ポジションもできると思いました。さらに言えば、寅子と表裏一体の部分もあります。なぜなら、寅子が進む道は誰かがケアをしてくれる道なので、その裏にいるケアする人のことを描きたいと思ったんです。