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主婦として生きる花江、「名誉男性」になりオヤジ化する寅子

朝ドラは、これまでも男性を支える側を多く描いてきました。人物を近くに感じて寄り添いやすい設定だとおもいます。支える側の花江に共感する人も多いですよね。だからこそ、その親友であり義理の妹でもある寅子が年齢を重ね、一家の稼ぎ頭として力を持つようになってきてから、オヤジ化するターンは避けて通れないと思いました。

権力や立場、肩書にあぐらをかいてしまうのは、性別ではなく、その環境や社会構造がさせること。法曹界が裁判官として努力する寅子を認め、“名誉男性”にする中、そのケアをするのは家族です。実際、寅子が花江にしてしまったような扱いを世の中の男たちは妻子にしているわけで、それはたぶん自分の家庭と照らし合わせて、それが普通だと思っているから悪意なくやっちゃうことなんですよね。

でも、それと同じことを女性がやると、それだけでは済まなくなる部分がある。その問題は描かなければいけないなと思ったし、人は絶対間違えるものなので、寅子が間違えるところはぜひ描きたいなと思っていました。

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寅子が新潟に転勤する展開に描きたかったことを詰め込んだ

この展開のきっかけとなったのは、寅子のモデル・三淵嘉子さんが同僚たちとラジオに出たとき、女性法曹の道が家庭裁判所に限られていくことについて長官に意義申し立てしたというエピソードです。私は、三淵さんがその発言がきっかけで判事になったとき名古屋地裁に飛ばされたのかと思ったのですが、取材担当の清永聡さんから、「おそらく長官はそこまで考えていない。そういう意図の人事ではなかったと思います」と言われ、性別には関係ない人事だったんだろうと思ったんですね。

その部分はドラマでは新潟への転勤として描きましたが、では、男性の場合はあまり問題にならないこと――家族を置いていくのか、娘の優未はどうするのかと考えたとき、そこで寅子と優未が親子2人になる意味がないとダメだと思いました。もともと寅子がオヤジ化するタイミングはどこかで入れたくて、そのタイミングを決めあぐねていたのですが、花江や弟、甥たちに責められるやり取りは、寅子が30代~40代の中でいるうちにやらないと意味がないな、と。