たとえば、QRコードの白黒模様や本の帯の推薦文といった日本で当たり前になっていることを、当たり前にした人物に焦点をあて、それを再現ドラマを使って掘り下げていく番組が『あきやま魯山人』だ。番組の概要を聞くとありがちな雑学バラエティのようだが、この番組が特異なのは、取り上げられた6人の人物をすべてロバートの秋山竜次が演じていることだ。1日6本まとめて撮影されたという。
秋山といえば「クリエイターズ・ファイル」などでもお馴染みだが、いかにもいそうなキャラをアクが強く演じさせたら右に出るものはいない。しかも、男女関係なく演じられるのが強みだ。実際、物件チラシの「駅徒歩何分」の表示を適正なものに変えた公正取引委員会の鈴木深雪という女性も演じた。生産者の顔写真を当たり前にした種本祐子に至っては撮影場所に本人も来ており、秋山の演技を見て「昔の私に似ている」と評したそう。男性ならさらに精度は増す。実際に本人が喋っている音声も流れるが、それと口調がそっくり。そして似ているだけでなく、秋山の手にかかれば強烈なキャラになるからコント的な楽しみ方もできる。
司会を務めるのは、新人アナウンサー上垣皓太朗。23歳ながらベテランアナウンサーのような風貌で話題だ。ちょうど同じ日、この番組の後に放送された『久保みねヒャダこじらせナイト』でも、久保ミツロウの「上垣アナが今熱い」という“つぶやき”が紹介されていた。巷では「令和の軽部真一」などと言われているが、久保は「狙うところは『令和の露木茂』」と評す。ヒャダインも「これに関してはフジはホントに見る目ありますよね」と同調していた。40代しかわからないようなマニアックな歌謡曲が好きだというプロフィールに3人は、もし「おっさんキャラ」に寄せていっているなら、無理しないでほしいと心配しつつ、ベテラン扱いではなく、新人アナとしていい経験をしてほしいと語っていた。
『あきやま魯山人』での上垣アナは、堂々たるもの。先輩たちを前に落ち着いた語り口で進行していた。そう、この番組がもうひとつ特異なのは、「ゲスト」としてパネラー席に座っているのが、西山喜久恵、佐々木恭子、島田彩夏というキャリア豊富な女性アナウンサーたちだということ。つまりスタジオにいるのは全員アナウンサー。だから当然、VTR中、ワイプに映るのも全員アナウンサー。魯山人のVTR中に彼の著書『魯山人味道』が紹介されると「私この本持ってるかも」と島田アナが言ったりと、タレントとは一味違うリアクションが新鮮。「ご名答」「お開き」といったフレーズが似合いすぎる上垣アナを筆頭に扱うネタも番組の作りも“渋さ”が光っていた。
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『あきやま魯山人』
フジテレビ 放送終了
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