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結論から言ってしまうと、うん、真っ向勝負を挑んで見事に勝っている。
物語の中心にあるのは「ゴシップ人狼」というテレビ番組である。複数人のプレイヤーに“村人”や“人狼”などの役割を振り、グループの中に潜む“人狼”を推理して言い当てるパーティーゲームを「人狼ゲーム」と言うが、「ゴシップ人狼」はその芸能界版というべきルールで行われる。プレイヤーは自分が知っている芸能人のゴシップを披露するのだが、その中に嘘のゴシップを語っている人間が紛れている。その嘘つきを炙り出すのが「ゴシップ人狼」なのだ。
ある失敗から崖っぷちに立たされているバラエティ番組のプロデューサー・幸良涙花は「ゴシップ人狼」の生放送を何としても成功させて、会社からの戦力外通告を跳ね除けねばと戦々恐々としている。ところが本番を直前に控える幸良を、不測の事態が襲う。スタジオに置かれた段ボール箱の中から、人間の死体が出てきたのだ。
予想の斜め上をいく展開の連続で読ませるスリラーが本作の基調である。作者の工夫が奏功しているな、と感じたのは物語の要となる「ゴシップ人狼」が「人狼ゲーム」を下敷きとしたゲームになっていることだ。簡単に言ってしまえば「人狼ゲーム」はプレイヤー同士の証言から手がかりを得て人狼=犯人を当てる、本格謎解きミステリの構造を持った遊戯である。