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棋界だけにいると身につかない価値観

――早稲田大学の政治経済学部に入学されましたが、大学に入ってよかったと思うことは何ですか?

竹俣 日常生活においては、授業が終わってからお仕事などがないときは、部室に行って将棋を指すことができるのがとてもいいですね。芸能のお仕事をさせていただく上では、早稲田大学出身の方にお会いすることが多くて、早稲田つながりで初対面でも温かく接していただけることがうれしいです。

 

――大学という環境は、将棋界のような伝統的な社会とは大きく違う世界ではありませんか? 伝統的な世界にはいわゆる男尊女卑のような風潮が残っていることもよく指摘されるところですが。

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竹俣 将棋界は男性棋士、女流棋士が分けられているように、いわゆる伝統が続いている世界ですよね。そこで育まれている価値観は尊重すべきものですが、でも一方で、棋界だけにいると身につかない価値観も世の中にはたくさんあると思います。生きていく中で、価値観、ものの見方が一つしかないというのは、危険なことだと思うので、いろんな考え方や人に接することができる大学に入ったことは絶対に良かったと思っています。

――進学を決める一方、芸能活動を始めるのも高校時代ですね。『ワイドナショー』の時から、もう現在の事務所に所属されていたんですか?

竹俣 いえ、最初は日本将棋連盟を通じて依頼が来ました。事務所に所属したのは出演している途中からです。

 

私にとって身近な世界の一つが芸能界だった

――どうして芸能活動に興味を持ったんでしょうか。

竹俣 学生といっても職業を持っているので、経済的に自立したい思いが強かったんです。私は棋士として対局料をいただいていますが、高校の時に自分の対局料を知って、将棋だけではまったく自立できないことを自覚したんです。それで、もう一個何か職業を持った方がいいと考えて、タレント業もすることにしました。

――もともと芸能界には興味があったんですか?

竹俣 変な話、私にとって身近な世界の一つが芸能界だったんです。子どもの頃から『ネプリーグ』に出演したりしていましたから。

――でも高校の時から経済的に自立したいって思う人は、なかなか珍しいのではないですか。

竹俣 親は構わないと言ってくれたんですが、親に負担をかけて学校に行きたくないなっていうのがあったんです。それと、高校の先生から「職業はいくつ持ってもいいんだよ」って背中を押されたことも大きかった。それで、自分で働いたお金で勉強するのもいいなって考えて、今は芸能のお仕事でいただいているお金で学費を払っています。

 

せめてクイズ5級にはなりたい

――学業、芸能、そして棋士として、それぞれの目標があると思いますが、将来の夢はどんなものですか?

竹俣 それぞれというより、全てを合わせたところに目標があるとするならば、子ども向けの将棋番組を作ってみたい、というのは夢ですね。私は将棋を始めたときに周りにやっている人がいなかったので、けっこう一人ぼっちだったんですよ(笑)。すごく寂しくて。だから将棋を好きになった子どもが、将棋をよく知らない親とでも一緒に楽しめるような番組があったらなって、思うんです。そういう面で将棋界を支えていけたらいいなって考えています。

――クイズプレーヤーとしての目標はありますか?

竹俣 えー、クイズの世界でですか? 今はクイズアマチュアの10級くらいだと思いますが、せめて5級くらいまでにはなりたいかなあ(笑)。

――謙虚ですね!

竹俣 お砂場遊びみたいに、深く掘り始めると止まらなくなっちゃうから、ほどほどにしておきます(笑)。

 

写真=佐藤亘/文藝春秋

たけまた・べに/1998年、東京生まれ。6歳から将棋を始め、森内俊之九段に師事。2012年、14歳で女流プロ入り。現在、女流初段。渋谷教育学園渋谷中学・高校を卒業し、2017年に早稲田大学政治経済学部入学。経済学専攻で、大学の将棋部に所属している。