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 時はおりしも秋、所もススキが穂を垂れ、赤とんぼのつがいが小銃の銃口とも知らず、羽を休める季節感丸出しの東北の演習場内である。この共同訓練の主な目的も対ゲリラ・コマンドゥ作戦つまり列島に潜入してきた小規模のゲリラ部隊掃討戦に関わる戦技技量の向上である。そのカウンター・パートとして実際今も戦闘が続くレバノンやイラクで対ゲリラ戦の実戦経験豊富な仏軍は最適なのである。

あのコソボで見た外人部隊に日本でお目にかかれるとは

 派遣規模も昨年仏領ニューカレドニアで実施された「BRUNET TAKAMORI 23」の小隊規模から仏軍50名、自衛隊側100名からなる中隊規模にスケールアップし、来年は大隊、連隊規模にまでスケールアップするかもしれんのである。しかも日本国内での初の日仏陸軍の共同訓練である。

 

 それにしても日本国内の演習場で銃弾とともに飛び交うフランス語がこんな近くで耳にでけるとは、想像もできんかった。さらに今回派遣された仏軍部隊の左腕に輝くエンブレムにわが目を疑った。そこには「LEGION ETRANGERE」と、なんと「外人部隊」やんけ。あのコソボで、ジブチで見た外人部隊にこの日本でお目にかかれるとは夢でも見んかった。

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 ドーランの下に隠れた肌の色も様々、東南アジア系にアフリカ系、中には日本人もいるはずで、実際コソボでもジブチでも話を交わしたこともあった。また手にする小銃もコソボやノルマンディで見慣れたブルパップ式のごついFA-MASでなく、外人部隊が手にすると小さすぎるM-4! いつからFA-MASやめたんや。

 いやいやよう見たら「Heckler & Koch」に「MADE IN GERMANY」の刻印があってM-4やなしに、より精度が高く、浸水にも強いHK416やんけ! さよかいな……歩兵の基本的武器である小銃が自国製やなしに独製とは……隔絶の感がある。しかもほとんどすべての小銃のピカティニ・レイル(機関部と銃身部四方に固定されたギザギザ・レイル)を備え、その上部にはダット・サイト(発光式低倍率照準器)が装着され、さらに各人種、体格に合わせフォア・グリップ(前縦グリップ)まで装着してるのである。もちろん脱落、紛失防止のための紐やビニールテープ、空薬莢受けもしてる兵もいない。

 

 それに並んで一斉射撃に臨んだ陸上自衛隊第39普通科連隊員が手にする89式小銃は統一したかのように、全員オープン・サイト(スコープ無しで標的、照星、照門を肉眼で合わせる)にオプション無しである。

 そのあたりが速射性にすぐれ、各人が自由に武器をカスタム化でき、度重なる実戦を経て戦術や武器を臨機応変に変えてきた仏軍といまだ憲法下では軍隊と認められないばかりか、専守防衛を旨とするため、領空侵犯機に撃たれるまで危害射撃もできないばかりか、厳しい安全基準と規則のせいで、小銃1丁カスタム化できない我らが自衛隊との違いである。

撮影 宮嶋茂樹

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。