東北はすでに秋、ススキの穂を揺らす秋風に乗ってくるのは赤とんぼの群れとけたたましい銃声であった。

 

 

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本邦初の日仏陸軍による共同訓練

 9月8日から宮城県陸上自衛隊王城寺原演習場とさらにヘリ移動した岩手県岩手山演習場で繰り広げられたのは本邦初の日仏陸軍による共同訓練「BRUNET TAKAMORI (ブリュネ タカモリ)24」作戦であった。双方とも幕末に活躍したフランスと日本の軍人やが、かたやハリウッド映画「ラスト・サムライ」のモデルにもなったといわれ、幕府軍の軍事顧問団として来日し、戊辰戦争では榎本武揚らとともに官軍と戦ったフランス陸軍ジュール・ブリュネ大尉の名字、こなた戊辰戦争で官軍の指揮をとった西郷隆盛のファースト・ネームから。幕府軍の顧問とそれに相対する官軍の指揮官というちょっと無理すじのネーミングである。

 そして西郷隆盛は最後は西南の役を引き起こした賊軍の指揮官として討たれたはずや。さらにその名はここ東北地方では21世紀の現在でも憎悪の対象である。まあ勝負は時の運、昨日の敵は今日の友である。先の大戦では敵同士だった日仏であったが、現在は「力による現状変更を目論み」南シナ海の環礁を国際司法裁判所の判決をガン無視して、埋め立て軍事基地化するわ、すでに我が国の尖閣諸島周辺を自らの海とした中国や「21世紀になっても隣国が国防に充分な備えがないと見るや、ためらわず侵略し、民間人まで殺戮する国家が存在することを証明した」ロシアが共通の脅威となっているのである。

 

フランスにも日本にも迫る脅威

 それにしても何もわざわざヨーロッパから日本と訓練するためだけにやってくるかあ? それがフランスにも日本にもおおありなのである。17日、今回の仏軍のカウター・パートとなった陸上自衛隊の第9師団長藤岡史生陸将とともに記者会見に臨んだ仏陸軍第6軽機甲旅団長ヴァランタン・セイラー准将は我々の目の前で開口一番こう言い放った。「フランスはこの地域に7つの海外領土を持ち、160万国民が暮らすインド・太平洋国家である」と。8月12日に幕を閉じたパリ五輪のサーフィン競技も南太平洋のタヒチで開催されたんや。タヒチはあのゴーギャンが晩年まで暮らしたフランス領や。

 ついこのあいだ大規模暴動が発生、マクロン大統領自らが軍引き連れ駆けつけたニューカレドニアもフランス領や。そんな太平洋地域の島々の指導者のほほを札束でひっぱたたき、ドミノ倒しのように中国が覇権を拡大するのを指をくわえて見とるわけにはいかんのである。

 

 かくして中国の脅威からの防波堤となりうる日本との共同訓練も必然となってきたのである。