とらつば屈指の“胸アツ”場面だった。9月23日放送の第126話。大法廷で「はて?」と口にしたのは、佐田寅子(伊藤沙莉)ではなく、山田よね(土居志央梨)だ。「いけ、山田」と轟太一(戸塚純貴)が後押しすると、よねは魂の弁論を繰り出した――。
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2人がここまで視聴者に愛されたワケ
よね&轟のコンビが、ここまで視聴者に愛されたのはなぜか。著作に『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)などがあるライターの木俣冬氏が考察する。
「男女平等というテーマを持つ今作で核となったのが、よねと轟です。それぞれ男装と同性愛という個性はあったものの、性別を感じさせないキャラクターでした。2人が最後まで恋仲にならなかったことも含め、山田轟法律事務所のセットにも墨書きされた憲法第十四条の一節、『性別において差別されない』を象徴していると思います。男女の別の前に一人の人間である、というメッセージを強く背負った存在であり、だからこそ2人の元には本音を吐露しに訪れた人々がいたように、視聴者も愛着を感じたのではないでしょうか」
よねと轟の共通点
演じた土居と戸塚は同い年の32歳。誕生日も土居が7月23日、戸塚は7月22日で1日違いだ。
共通点はまだある。土居は2011年に京都造形芸術大(当時)入学後、演技の道へ。同年の『水戸黄門』最終回に側室役で出演した。かたや戸塚も10年にジュノン・スーパーボーイ・コンテストから芸能界入りし、11年版『花ざかりの君たちへ』でドラマデビュー。俳優歴も“同期”だ。
今作が初共演
以降、様々な作品に出演してきた2人が、初共演したのが今作だった。現場では、土居から「誕生日が1日違い」との話題で話しかけて打ち解けたという。寅子たちが通った明律大学で、同級生役を演じた俳優の松本一樹が証言する。
「土居さんは喜怒哀楽の表情も凄く多彩で、演技の土台がしっかりされている方です。戸塚さんは轟という豪快かつ繊細な役柄を見事に演じる姿を見て、経験値の高さを感じました」