制作予算の規模は日本キー局の数十倍に及ぶことも
日本のテレビ局出身である早川氏が驚いたのは、まずネットフリックスやアマゾンプライムなどの“制作予算の規模”だという。
「大手調査会社の調べによるとネットフリックスは、いまや全世界のおよそ200カ国に2.7億人、アマゾンプライムも2億人ものユーザーを抱えていると言われています。テレビ局は国内で数百万人単位に見られることを想定して番組作りをしていますから、規模がまったく違う。
そこで動いているお金の額は、日本のキー局が制作している予算の数倍、多いときは5倍~数十倍にまで上ります。予算が多ければ多いほど良い作品ができるわけではありませんが、制作面でさまざまな挑戦ができることは言うまでもありません」
「テレビ業界に失われつつある表現の自由」がある
予算面だけでなく、広告モデルに依存しない動画配信サービスはコンプライアンス面でも、「テレビ業界に失われつつある表現の自由」があるという。そのため、地上波で戦うことにフラストレーションを感じた日本のテレビプロデューサーたちが続々と外資系動画配信サービスに参入している。
「かく言う私もその1人です。『沈黙の艦隊』は予算額だけでなく、そもそも作品のテーマが〈日本の核武装〉です。自衛隊の是非をめぐる議論や安全保障のあり方を本格的に扱うドラマは地上波ではやりにくい。テレビではできなかった作品だと思います。大ヒットした『地面師たち』の反社会的とも言えるアンチヒーローたちの描写や暴力的なシーンも、配信だからこそ実現できています」
10月10日発売の「文藝春秋」11月号では、“配信戦国時代”の実態、欧米や韓国で進化しているエンタメ業界の構造改革、その最先端のドラマ制作現場でプロデューサーや監督に代わって全体の指揮を執る「ショーランナー」の存在、ゴジラとジブリのアカデミー賞受賞に兆しが見てとれる「日本エンタメの勝ち筋」について、全12ページにわたり語っている(「文藝春秋 電子版」では10月9日公開)。
配信ドラマは戦場だ!