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政治の風はハリスへの追い風に

 そのトランプに今回の選挙で、2度、大きな追い風が吹いた。

 1度目は、現役大統領であるジョー・バイデンとの討論会。よぼついた足取りで、バイデンが会場に現れたとき、すでに勝負はあった。討論会でも、言語不明瞭のまま言い間違いを多発して、散々な結果となった。このとき、多くの無党派層が、バイデンに次の4年を託すのは無理だ、と思った。

 2度目は、トランプが演説中に狙撃された時。直後に、しゃがませようとする警護隊を制し、右手を高く突き上げた。AP通信のカメラマンが、星条旗をバックに写真に捕らえた時だ。トランプに嫌悪感を抱く層までを、抱え込んだよう。これでトランプの勝ちは決まったかのようにも見えた。

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ワシントンDCで起きた連邦議事堂襲撃事件 2021年1月6日

 しかし、政治の風は移り気である。

 バイデンが自らの大統領選挙の出馬を取りやめ、カマラ・ハリス副大統領を後継指名した。民主党が迅速に一本化していくと、政治の風は逆流を始め、ハリスの追い風となって吹きだした。

 トランプとの最初で最後となった討論会の冒頭で、ハリスがトランプに近寄り、簡単に自己紹介した後、握手をした時点で、討論会での勝利が確定した。討論内容でも、トランプを圧倒した。直後のCNNの調査では、視聴者の63%が、討論会でハリスが勝利したと判定した。

勝敗のカギを握る3つの州とは…

 投票日を目前に控えた今、世論調査では、ハリスが一歩リードしている。

 ならば、今回の選挙ではハリスが勝つのかと言えば、まだ勝負の行方は分からない。最後の最後までもつれるだろう。早計に勝ち負けを予測するのは、16年のトランプの大逆転に学んでいない愚か者だ。

 今回の選挙戦で注目するべき州は3つある。1つは、私が1年間居を構えたミシガン州。その右隣のペンシルバニア州。ミシガン州の左隣のウィスコンシン州。この3州は、もともと“青い壁(青は民主党のイメージカラー)”と呼ばれ、20年以上、民主党が守ってきた。しかし、その3州を引っくり返したのが16年のトランプだった。

ワシントンDCで起きた連邦議事堂襲撃後に逮捕される「Qアノンシャーマン」 2021年1月6日

 それが20年、再び、バイデンによって“青い壁”が出来上がり、トランプの敗北へとつながった。

 24年も、この3州が最後まで僅差でもつれ、勝敗のカギを握ることになるのは間違いない。