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 一方で、自民党や岸田文雄憎しのあまり、彼の震災対応を根拠が薄弱なまま拙速に叩く人々もいる。これらの書き込みは拡散され、するとその一つ一つに対して、インプ稼ぎ(Xはインプレッション=閲覧数によって報酬が入るため、バズった書き込みに意味もなく返信をつけることで便乗して金が稼げる)のために意味不明なリプライが金魚の糞のように大量に付く。重要な情報が何なのかさっぱり分からない。地獄。

 私は無力さを感じつつ、SNSでは震災関連のデマを訂正することばかり気にしてしまった。正しい情報を拡散する自信はもう持てない。

 ああ……これがXだ。

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 私はこれまでしつこく「ツイッター」と呼んでいたけれど、このたびついに、「これがXになったということか」と悟ってしまった。混沌としてるけど善意のほうがどうにか辛勝するのがツイッター、イーロン・マスクが「バズれば勝ち」主義を堂々と導入したことで悪意が浄化されなくなったのがXだ。名前のダサさに合わせて、本質的に違うものになったのだ。

イラストレーション:能町みね子

 そう、「X」なんて名前はダサすぎた(X JAPANには悪いけど)。使用頻度の低いアルファベットでもあるZ・Q・Xのような文字は、幼稚なカッコつけ方をする子供たちが好む印象がある。「結局稼げる人が勝ちじゃん」なんて知ったような顔で言う、生意気な中学生みたいな。

 これらの文字って、「Z」なら親ロシアのシンボル、「Q」といえば神真都QやQアノン……くしくも最近騒がれる、知的でない禍々しい団体ばかり思いつく。そして、「X」……。文字に罪はないけど、もはや三大「忌まわしいアルファベット」。

(「週刊文春」2024年1月18日号を加筆・修正)

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