丸刈りになることが条件だったが…
試合に負けても観客を魅了する“プロレスの天才”長与千種を的確に捉えているのがよくわかる。と同時に、唐田は長与に自分との共通点を見出していた。
「覚悟を決めてこの作品に臨んだので、オーディションを入れて約3年、諦めずに努力することの大切さをあらためて学んだ気がします」(シネマトゥデイ 2024年10月6日)
オーディションは多くの俳優が受けたが、白石和彌監督が強くした推したことで唐田が長与千種役を獲得する。白石監督を動かしたのは唐田の切実な思いだった。
「人生の再出発にあたって、どうしても芝居がしたいという思いが本当に強くて、僕はその思いにやられて唐田さんでいきたいという思いがあって。結果的に大成功というか、本当に頑張ってくれました」(マイナビニュース 2024年10月2日)
クライマックスではダンプ松本との敗者髪切りマッチがあるため、丸刈りになることが条件だったが、唐田はまったく意に介さなかった。実際、髪切りマッチで撮影スタッフから心配の声があがっても、唐田は笑顔でリングに上がっていったという。
感情も自然に溢れてくるようになった
準備当初は2キロのダンベルしか持ち上げることができず、でんぐり返しも満足にできなかったが、やがて70キロ近い重量を持ち上げるようになり、サソリ固めやフライングニールキックなどのプロレス技を習得した。
準備期間から出演者たちは、どんどん役柄にのめりこんでいった。なかでも、のめり込み方が激しかったのが唐田だった。準備期間からプロレスラーのマインドを身につけていったため、試合での悔しさや嬉しさなどの感情も自然に溢れてくるようになった。
クライマックスの髪切りマッチでの撮影後、唐田は悔しさのあまり、家に帰ってもずっと泣いていたという。「プロレスを演じる」という意識を持ち続けていた剛力彩芽とは好対照だ(Lmaga.jp 2024年10月5日)。