――なぜ泣いてしまったのでしょうか。
田中 「手放したら、もっと呪われるかもしれない」と怖かったそうです。ただ僕は、長年一緒に過ごしてきた“情”もあったのかな、と思っています。その作家さんから、つい最近連絡をもらったんですが、まるで憑き物が落ちたようにさっぱりした様子でしたね。
そのときに、「不思議な夢を見た」とも言っていて。なんでも、アンティークドールがソフトビニール製の可愛らしい人形と楽しくすごしている、っていう内容だったらしいんですよ。僕が引き取った後、僕の部屋にあるタイのルクテープ人形「ホムちゃん」の隣においていたので、びっくりしました。アンティークドールも作家さんも、お互いが好きすぎて“依存状態”になってしんどかったのかもしれませんね。
呪物を引き取ったらお皿が割れ始め…
――手作りのコトリバコと呪いのアンティークドールを引き取った田中さんには、何か影響は出ていないのでしょうか?
田中 僕の勘が鈍いだけかもしれないですけど、今のところはないですね。ただ、他に引き取ったものの中には「これ、呪物の影響ちゃうんか?」と思うようなこともありました。
――どんな影響があったか、詳しく教えていただけますか。
田中 東南アジアに、亡くなった子どもをミイラにする「トヨル」という呪物があって。きちんと供養すると、福をもたらすと言われているんですよ。幼い我が子を亡くしたタイ人の夫婦がトヨルを作ったのですが、直後に妊娠が分かって供養をおろそかにしてしまった。そしたら、奥さんが急死したり、生まれたお子さんは病気がちだったりと、立て続けに不幸が起こったそうです。
とあるツテを通じて、僕がそのトヨルを引き取ったのですが、それ以降気が付いたら、うちの食器が“スパンっ”と真っ二つに割れているんですよ。最初は「古い食器だし、自然と割れたのかな」と思っていたのですが、その後用意した食器も気付いたら同じように割れていて。
今はその現象は収まっているので、偶然が重なっただけかもしれません。でも、トヨルを引き取ったタイミングとお皿が割れ始めたタイミングが一緒だったので、当時は怖かったですね。