「鳥の卵を食べたら顎が曲がった」恐ろしい言い伝えがある“守り神”
――先日発売されたコミックエッセイ『ぼくと呪物の奇妙な生活 最恐呪物蒐集編』に登場する呪物についても教えてください。「オシラサマ」や「樹海で見つけた謎の遺物」など、気になる呪物が描かれていましたね。
田中 オシラサマは、東北地方に伝わる守り神の人形です。地域によっては文化財にも指定されているところもあるんですよ。
――田中さんが持っているオシラサマは、どんな特徴があるのでしょうか。
田中 僕のは、真っ赤な着物を着たオシラサマ。自宅に祀ると、家内繁栄の効果があるらしいんですよ。
以前は東北地方に強く根付いていたオシラサマの文化も、今は珍しいものになってきていて、新しいオシラサマを作ってもらうのも、譲ってもらうのも難しい。書籍ではなんとかツテをたどってオシラサマを作ってもらったエピソードを書いたのですが、実はその後、先祖代々オシラサマを祀っていたご家庭からも譲っていただいたんです。
――そのご家庭は、なぜ家内繁栄をもたらす神様を手放そうと思ったのでしょうか。
田中 オシラサマは、毎朝お祈りが必要だとか、4足歩行の動物を食べちゃいけないとか、子孫に受け継いでいかなければいけないとか、とにかく“禁忌”が多いんですよ。禁忌をおかして病気になったり、顔が歪んでしまったりした人がいる、という言い伝えもあります。「鳥の卵を食べたら顎が曲がった」という伝承もあるらしいです。
オシラサマを引き取ったあとの影響は?
――それは恐ろしいですね……。
田中 「手放したいけど、怖くて簡単には手放せない」と困っている人が結構いるみたいで。僕にオシラサマを譲ってくれたご家庭も、「子どもがいないから引き継ぐ先がなくて困っていた」と言っていましたね。
知り合いの住職と一緒にそのご自宅にお邪魔して、引き継ぐための“儀式”をしてから受け取りました。血縁関係のない僕が突然引き取ってしまったら、何が起こるか分からないですからね。
――オシラサマを引き取ったあと、何か影響はありますか?
田中 禁忌を守って祀っているからか、今のところはありませんね。ひっそり佇まれていて、我が家を見守ってくれています。