富士の樹海で亡くなった方のご遺族から譲り受けたもの
――「樹海で見つけた謎の遺物」についても教えていただけますか。
田中 富士の樹海で亡くなった方のご遺族からロープと観音像を譲り受けたのですが、いろいろとよく分からないことが多くて……。詳しいことは知らないけど、首をくくって亡くなったわけじゃないらしいんですよ。
――それなのに、隣にロープが落ちていた?
田中 そうなんです。見た感じかなり年季が入っているから、少なくとも亡くなった方が用意したものではなさそうだ、と。さらに分からないのが、ロープと共に観音像が置かれていたと言うんですよ。その観音像は樹海に詳しい人たちの間ではかなり有名なもので、長年白い廃車の近くに置かれていたそうです。ロープにしても、観音像にしても、誰がどんな理由で移動させたのか……。
発見されてからしばらくは知人の自宅の倉庫で預かってもらっていたのですが、知人家族が謎の腰痛や発熱に悩まされたり、倉庫がある方向で謎の黒い影を見かけたりしたそうで。怖くなって、僕のところに相談が来たという経緯です。預かってしばらく経ちますが、今のところ僕には影響ないですね。
怪異を起こしていないなら呪物じゃなくて遺留品
――ちなみに、田中さんは呪物と遺留品の違いは何だと考えていますか。
田中 亡くなった方が生前使っていたものが遺留品で、遺留品の中でも、過去に一度でも怪異を起こしていたり、もしくは背景に呪物を生み出す呪術師が関わっていたら「呪物」ですかね。あとは、手作りのコトリバコのように、誰かを呪う目的で作られたものもかな。
時々、「田中さん、呪物収集しているでしょ」と言って、事故物件に残っていたものや、自死した方が直前に使っていたタオルを送ってくれる方がいるんですよ。最近だと、殺人現場に遺されたベッドをもらいましたね。なんでも、そのベットの上で殺人が行われたんだとか。
――充分いわくがありそうですが……。
田中 たとえ血がついて見た目のインパクトがあっても、怪異を起こしていないならそれは呪物じゃなくて遺留品ですからね。
ただ、そのベッドには後日談があって。ベッドを置いてる部屋に遊びに来た知人が、そのベッドの上で夜寝ていたんですよ。そしたら、金縛りにあって、白いジャージっぽい服を着たおじいさんが立っているのを見たらしくて。
そのベッドの本来の持ち主は、白いジャージを愛用していたおじいさんらしいんですよね。
撮影=山元茂樹/文藝春秋