超自然的な力によって人間に禍福(かふく)をもたらすと信じられ、神聖視されている物体「呪物」。その呪物を蒐集し、自宅に「呪物部屋」を設けて一緒に生活している珍しい人がいる。怪談師で呪物コレクターの田中俊行さんだ。
田中さんは全国各地、時には海外まで足を運んで呪物を集めている。今年8月には呪物蒐集の日々を描いたコミックエッセイ『ぼくと呪物の奇妙な生活 最恐呪物蒐集編』(竹書房)を刊行。呪物コレクターとして注目度が高まる田中さんに、“呪術大国”といわれるタイの実態や、呪物と暮らす彼がどんな生活を送っているのか、話を聞いた。(全2回の2回目/1回目から続く)
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タイでは呪物を作るときに“人体”を使用していた
――今回刊行された『ぼくと呪物の奇妙な生活 最恐呪物蒐集編』では、“呪術大国”タイ発祥の呪物がいくつも登場しています。
田中 「ナムマンプラーイ」や「呪物針」、「ルクテープ人形」はタイの呪物ですね。ナムマンプラーイは遺体から採取した油をハーブと混ぜて、呪術師が念を込めたもの。呪物針は“勘”を良くするために体内に入れる、念のこもった針。ルクテープ人形は呪術師が精霊の魂を宿らせた人形で、妊婦とそのお腹にいた赤ちゃんの遺骨と油の入った容器が、人形の腹部に縫い付けられています。
――人体に関連するものが多いのですね。
田中 そうなんです。タイでは、呪物を作るときにに“人体”を使用することが多いんですよ。ご遺体から油をとったり、足をまるまる一本煮込んだり、骨や皮をそのまま使ったり。呪物に使うのはどんなご遺体でもいいわけではなくて、「未練を残して亡くなった方のご遺体ほど、強い力を宿す」と言われているそうです。
ただ、最近のタイではご遺体を使って呪物をつくることは違法になってきていて。今出回っているのは、ご遺体は使わずに念を込めただけの呪物がほとんど。
昔作られた呪物の中には実際にご遺体が使われているものも一部ありますが、かなり貴重で高価ですね。とあるお坊さんのご遺体から抽出した油を使ったナムマンプラーイは、小指くらいの小瓶で数万円もするそうです。