超自然的な力によって人間に禍福(かふく)をもたらすと信じられ、神聖視されている物体「呪物」。その呪物を蒐集し、自宅に「呪物部屋」を設けて一緒に生活している珍しい人がいる。怪談師で呪物コレクターの田中俊行さんだ。

 田中さんは全国各地、時には海外まで足を運んで呪物を集めている。今年8月には呪物蒐集の日々を描いたコミックエッセイ『ぼくと呪物の奇妙な生活 最恐呪物蒐集編』(竹書房)を刊行。呪物コレクターとして注目度が高まる田中さんに、どんな呪物を集めているのか、呪物とはいったいどういう存在なのか、話を聞いた。(全2回の1回目/2回目に続く

呪物コレクターの田中俊行さん ©山元茂樹/文藝春秋

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呪物の数は1年で約150体→200体に増加

――以前文春オンラインで取材をさせていただいたときには、約150体の呪物を持っているとおっしゃっていました。あれから約1年が経ちましたが、現在は何体あるのでしょうか?

田中俊行さん(以下、田中) 今は200体ぐらいありますね。

――1年で50体、つまり1週間に1体のペースで増えていると。最近はどんな呪物を手に入れたのですか?

田中 いろいろあるのですが、最近でいうと手作りのコトリバコと、呪いのアンティークドールですかね。

いじめてきた相手を呪うための「コトリバコ」

――それぞれ、どんなものか教えていただけますか。

田中 コトリバコは、ある女性から譲り受けたものです。その女性は、小学生の頃にひどいいじめにあっていたそうで。いじめてきた相手を呪うため、ネットで見かけた「コトリバコの作り方」を真似て作ったものが、今僕の自宅にあります。

 見た目は、某人気キャラクターが描かれたかわいらしいアルミ缶の箱なんですよ。でもその中には、自分の髪の毛や皮膚、爪、そして血液を染み込ませたガーゼと一緒に、呪いたい相手の名前と、その人への恨みつらみが綴られた紙が入っている。

 実際にコトリバコを使うことはなかったけど、捨てるのもなんだか怖くて10年以上押入れの中にその箱を閉じ込めていた、と。扱いに困っていたところ、呪物コレクターの僕を思い出して相談してきてくれたそうです。

 

何かを訴えかけてくるアンティークドール

――では、呪いのアンティークドールは?

田中 アンティークドール作家さんから譲り受けたものです。陶器でできた球体関節の人形で、今買うと何十万円もするんだとか。その方が作家になったばかりの頃に作ったものだそうで、かなり思い入れが深いものだと聞いています。

 そのアンティークドールが、あるときから何かを訴えかけてくるようになったらしいんですよ。その頃から生活もなんだかうまくいかなくなって、「この人形が関係しているのでは?」と怖くなった、と。それで僕が引き取ることになったのですが、受け渡しのときにその作家さん、泣いていたんですよ。