1ページ目から読む
4/5ページ目

「母も祖母も、うんざりです……」

「もう息子と会わないで下さい!」

隼人と面会をして1年が過ぎた頃、希美から電話があった。

「息子から手紙が来て、阿部さんが面会に来るので家族と面会ができなくて困るというんです。正直、凄く迷惑してるんです! もう、息子と会わないで下さい! よろしくお願い致します」

ADVERTISEMENT

電話の声は確かに希美だったが、いつになくヒステリックで、こちらが話す間を与えず、一方的に電話を切った。そもそも、希美が面会しろというから面会していただけで、隼人も嫌ならば、面会を拒否することができるはずなのだ。

しばらくして、隼人から面会に来て欲しいという手紙が届き、希美の電話の意図がようやく理解できた。希美は夫と離婚したことから、出所後、一緒に暮らそうと言い出したのだ。隼人はそのつもりはなく、これまで通り社会復帰については筆者と相談して進めると返信すると、「阿部さんは隼人の面倒を見る気はないと言っている」と書かれた手紙が届いたのだという。希美は面会に訪れたが、会いたくないので拒否しているとも書かれていた。

自分の意に沿わなければ相手に攻撃的になる希美の行動は、隼人の犯行を思い起こさせるものだった。一見穏やかに見えるが、気性の激しい性格は、よく似ていると感じた。

親族への依存は世代間で連鎖していた

「母は橋本と離婚したいと言っていました。橋本は、妹の学費に金がかかるようになると、母が自由に使える金を渡してくれなくなりました。事件前、母は、離婚したいから、僕に養って欲しいと言いました。それだけは嫌でした……」

希美は、被害女性との結婚を止めさせようと、女性に別れて欲しいと電話をかけたり、女性の勤務先まで押しかけて店のオーナーに別れさせて欲しいと迫ったこともあったという。女性にとってはたまったものではない。隼人は女性から別れを告げられていた。高価な贈り物やお金を送ったが、繋ぎとめることはできなかった。

「本当は死刑になって死にたかったので、店の客を襲うはずでした。それが、店に入ろうとすると彼女が出て来て……、『マザコンとは結婚したくない!』と言われたんです……。傷つきました……。僕は母から逃げたかったんです」