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隼人は、希美が女性との関係を壊したのだと母親を拒絶していた。夫と離婚した希美は、母親が亡くなったことによりその遺産で生活していたようだった。ところが癌になり、隼人の出所を待つことなく他界していた。

希美もその母親も、家族以外との関わりは希薄で、男性に依存し、子が成長しても子への執着が捨てられなかった。隼人は、家族への執着は世代間連鎖していると話していた。母と祖母の束縛から解放され、ようやく自立への道を歩み出している。

阿部 恭子(あべ・きょうこ)
NPO法人World Open Heart理事長
東北大学大学院法学研究科博士課程前期修了(法学修士)。2008年大学院在籍中に、社会的差別と自殺の調査・研究を目的とした任意団体World Open Heartを設立。宮城県仙台市を拠点として、全国で初めて犯罪加害者家族を対象とした各種相談業務や同行支援などの直接的支援と啓発活動を開始、全国の加害者家族からの相談に対応している。著書に『息子が人を殺しました』(幻冬舎新書)、『加害者家族を支援する』(岩波書店)、『家族が誰かを殺しても』(イースト・プレス)、『高学歴難民』(講談社現代新書)がある。