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「夫には黙っていましたが、隼人が家を出て行ってからも、週に一度は自宅を訪ねていました。事件前はげっそりと痩せて、疲れ切った様子でした……」

希美は、娘が事件によって不利益を受けることを心配し、夫から隼人と縁を切るように迫られ悩んでいた。筆者は希美から、刑務所にいる隼人と面会を続け、出所後、家族の代わりに社会復帰を支援するよう依頼を受けた。

交際相手に300万円を貢いだ悲しい理由

隼人はまもなく30歳になるが、犯行態様からは想像もつかない中性的で大人しそうな少年という雰囲気だった。懲役16年の判決を受け、地方の刑務所で受刑生活を送っていた。隼人はどうすれば事件を起こさずに済んだかという質問に、

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「もっと金を稼げていれば……」

と答えた。

隼人は被害女性に300万近く貢いでいたと報道されていた。

「彼女は金のある男を選んだんですよ……。女ってそういうものでしょ?」

筆者は首を傾げた。

「結婚して、ホステスを止めさせたかったんです。母のようになって欲しくなくて……」

希美が現在の夫と出会ったのは、ホステスをしていた頃だった。隼人は、義理の父親の橋本が大嫌いだった。

「母は橋本を金で選んだんですよ。祖母も橋本のことを勧めたはずです。母に水商売をさせたのは祖母なんです」

隼人は幼い頃から両親が共働きだったことから、よく祖母の家に預けられていた。

「祖母の家に行くと、まず、金を払えと言われるんです。何かあった時のためにと、母が少しお金を持たせてくれるのですが、いつも祖母に取り上げられていました。お金を持って来ないと、食べ物は与えてもらえません」

希美は母から酷い虐待を受けて育ったと話していたが、そんな母親の下に、なぜ息子を預けたのか。

「母から祖母の悪口はよく聞かされていました。それでも、祖母の虐待から僕を守ってくれることはありませんでした。母は、父と関係が悪くなると祖母に頼るんです。今もそうです」

祖母はまだ健在で、希美を支配しているという。