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 観客はライヴに酔っているが、リアムは酒に酔っている。これまたロックな光景だ。両手を後ろ手に回し、がに股で歌うリアムの姿はまるでお年寄みたいだが、この時23歳だ。そしてノエルは29歳。「ザ・マスタープラン」という曲を前に語る。

「若さについての曲だ。今日は若いお前らが歴史を作るんだ」

 この日のライヴでオアシスは“歴史”になったと評される。だけど本当の歴史は若い観客たちが作るんじゃないか。そんな風に感じさせる。

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アンコールの曲に納得

 オアシスは「ビートルズの再来」と称賛される。ギャラガー兄弟は同じ労働者階級出身のビートルズをリスペクトしている。ビートルズのデビューが1962年。それから30年余りの1994年にオアシスがデビュー。30年で一つの世代が巡り、流行も巡ると言われる。さらに30年がたって今年、オアシスは再結成され、この映画が公開された。来年は再結成ツアーも行われるという。これも何かの巡り合わせだろうか。

 だからアンコールの選曲には納得だ。そうだよね。最後は彼らの曲を歌うよね。ライヴがすべて終わってステージを立ち去り際にリアムは叫ぶ。

「ジョンに拍手を!」

 そうだ、君はジョンになりきっていたよ。丸メガネをかけてビートルズの曲を歌う姿が、僕にはジョン・レノンに見えた。

『オアシス:ライヴ・アット・ネブワース 1996.8.10』
監督:ディック・カラザース/2021年/イギリス/約110分/配給:カルチャビル/© Big Brother Recordings Ltd/公開中