ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・フー、ザ・キンクス、ジェフ・ベックをはじめとする60年代~70年代に数多くのアーティストのレコーディングに参加した伝説のセッション・ピアニスト、ニッキー・ホプキンズ。闘病生活を送りながら30年以上にわたり数々のミュージシャンと共演した“最高のセッション・マン”の物語に、生粋の洋楽ファンのジャーナリスト・相澤冬樹も感涙!
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ストーンズに愛されたって? 彼らだけじゃないよ。ビートルズも、キンクスも、ザ・フーも、60年代ブリティッシュ・ロックのレジェンドたちから引く手あまただったんだ。セッション界の“グランド・スラム”と呼ばれたもんさ。あの持病さえなければなあ……。
ミック・ジャガーが仰天したピアノ
ニッキー・ホプキンズ。バンドや歌手の求めでスタジオ録音に加わるセッション・ピアニスト。30年間で250枚以上のアルバムに参加した。ヒット・ナンバーは作詞作曲で完成ではない。ニッキーは曲に魔法をかける天才だった。彼のピアノがいかにずば抜けていたか、伝説のミュージシャンたちが熱く語っている。
ザ・フーのギター、ピート・タウンシェンド。
「早業のブルーズ・ピアノがどこから来たのか、まったく謎だった」
キンクスのギター、デイヴ・デイヴィス。
「シンプルでベーシックだけど駆り立てられるような色気。ニッキーは邪魔にならずに要素を溶かし込む能力があった」
だが何と言ってもここは、14枚のアルバムをともに作ったローリング・ストーンズだろう。ギターのキース・リチャーズとボーカルのミック・ジャガーは、初めてニッキーの演奏を観た時、驚いて互いに顔を見合わせたという。
「ピアノがとんでもなくて仰天したよ。白人の小柄な青年がミシシッピかシカゴの酒場にいるような演奏をするんだ」
「とてもメロディックなクラシック風のパートも、素晴らしいゴスペル風の演奏も得意で、ブルーズもうまかった」
脱退した元ベースのビル・ワイマンの姿を見られるのもうれしい。
「ニッキーが突然リフを思いついたり、メロディラインを持ってきて曲が一変する」
キースはニッキーとの関係について、曲の半分くらいを自分で作り、残り半分をニッキーが作ってくれたと明かしている。