すごい思考ツール』が話題の広告クリエイター・小西利行さんと、連続起業家の孫泰蔵さんの白熱のトークイベント。AI開発の最前線からいま最もビジネスに必要な力まで。

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小西利行氏(左)と孫泰蔵氏(右) 撮影・細田忠(文藝春秋)

シリコンバレーで顎が落ちそうになった

 先日、シリコンバレーに行ってAIの最前線を見て来たんですよ。本当にもう“ヤバい”ことになっていて、顎が落ちそうになりました。

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小西 泰蔵さんがそこまでいうほどのものって何ですか!?

 大企業はいろんなシステムを複数持っていますよね。在庫管理システムとか、カスタマーサポートシステムとか、会計システムとか……そこに、あるAIを入れると基層にあるシステムを自分で一気にすべて学習するんです。そこで従業員の人たちが、社内の各端末から自社のChatGPTみたいなボックスに会社のことを聞いたら何でも答えてくれます。

 例えば、自分が営業で取引先から「注文の品が届いてない」と問い合わせがきたとしましょう。今までならロジスティックや、警備の人とかに聞いて回ったりするところが、そのボックスに聞けば、「ここで間違えて二重発注がかかったため、バグでロックがかかって発注が止まってました」みたいにシステム全体を把握するAIがピッと答えてくれる。さらに、「このようなミスは過去10年の中で3回ありました。直しますか?」「Yes」って言うと、エラーの原因になったプログラムをAIが自動的に書き換えるんですよ。

小西 驚異的な便利さですね!

「1人もレイオフ、解雇する必要はないんですよ」

 「あとひと月で在庫切れしそうな商品リストは?」とか、何を聞いても会社のことならなんでも答えてくれるんです。そして従業員が聞けば聞くほど、AIがドンドン動き出す。学習しただけでは止まっているけど、人が質問をすることで必要な処理をどんどん判断できるようになって自動化されていく。最終的にはAIによって会社の事務的な業務を完全に自動化できるという驚愕の技術でした。

 すでに某フォーチュン500企業で導入が進められていて、これは文字通り従業員の仕事を消滅させてしまう。さすがに俺も心配になってその会社に雇用のことを尋ねたら、「AIが仕事を代替するだけで利益は出るわけだから1人もレイオフ、解雇する必要はないんですよ」という。さらに「うちの社員たちは、会社のことを良く知っていて、業務全般も製品知識も豊富で、会社を愛している人たちです。こんな貴重な人たちにしょうもない日常業務なんてやらせている場合じゃない。この人たちには新しい製品を企画したり、これまであまり対応出来ていなかった顧客と密接な関係を結んだりして、新しい事業をつくるほうに活躍してもらうので、会社の価値が何倍にも上がるはずだ」と。

孫泰蔵氏

小西 なるほどね。これまでの事務的な作業は全部AIがやってくれるから、新しい企画や新規開発事業などに人員を全振りできるってことですね。非常に前向きなビジョンだと思いますし、そうなっていく時代には、自分が本当に好きなことを突き詰めて、クリエイティブな可能性を探ったほうが絶対にいいですよね。