ジャーナリストの鈴木エイト氏が入手した内部資料によって、前回の2021年衆議院総選挙で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が自民党候補者たちを強力に支援していた実態が明らかになった。資料には具体的な支援として、婦人部と青年学生による電話ボランティア、壮年は自民党機関誌「自由民主」の配布などと記されている。
さらに、支援する議員の一覧表にはAからDのランクがつけられ、教会との関係性の深さが示されていた。議員一覧の中には石破茂内閣の閣僚や、元閣僚の名前もあった。
“組織的な協力関係”が存在すると疑わざるを得ない
「この資料をエイトさんに託したい」
渡された資料は33ページに及ぶパワーポイントで、表紙にはこうタイトルが付けられていた。
『激動の2021年「政治決戦 総選挙と日本の行方」』
作成者は、世界平和統一家庭連合のフロント組織、「世界平和連合(FWP)」の中部地区常任講師のS氏となっている。名古屋市を本拠とする国際勝共連合愛知県本部の最新の収支報告書には、代表者および会計責任者の欄にS氏の名前を確認することができる。
資料のファイル名は「2021.11.4全国事務局長会議 第3地区」。前回の衆院選(2021年10月31日投開票)を“総括”するための内部資料であることが、作成年月日から確認できる。最終更新日は21年11月5日となっていた。当時、統一教会は日本を5地区に分けており、第3地区は東海北陸信越近県に及ぶ中部地区一帯を指す。
この内部資料を見ると、自民党と統一教会には、“組織的な協力関係”が存在すると疑わざるを得ない。自民党が統一教会との関係を断絶できないのは、こうした選挙協力態勢があるからではないのか。
「勝てる可能性のある選挙区に反共ビラ10万枚を配布」
まずは資料を読み解いていこう。
2頁には、「勝共推進国会議員」4名の全員当選について本部から要請があったことや、各候補者の当落予測や当選戦略まで明記されている。
「勝共推進国会議員」とされる4名のうち、愛知4区の工藤彰三氏といえば、消費者庁を担当する内閣府副大臣として23年11月17日の国会で、教団の韓鶴子総裁との5回にわたる面会、21年選挙での電話作戦への応援を認めるなど、教会と深い関係にある人物である。5区の神田憲2区の青山周平氏も、関連団体会合への出席・挨拶や会費支出があったことを認めている(青山氏は会費支出のみ)。「勝共推進国会議員」とは、既に関係性が構築されている議員を指す用語といえるだろう。
「厳しい」16選挙区をピックアップ
5頁の「課題」では、16の「厳しい選挙区」がピックアップされており、このなかでも「小選挙区で勝てる可能性のある選挙区」である愛知1区、4区、5区には「各区10万枚の反共ビラを配布する」、9区には「4万枚配布する」など、激戦区の中でも勝算のある選挙区に対しては大規模な“テコ入れ”が行われたことが分かる。