『成瀬は天下を取りにいく』で2024年の本屋大賞を受賞した宮島未奈さんの新刊は『婚活マエストロ』(10月刊)。結婚の入口である婚活を取り上げた。
一方元弁護士で『元彼の遺言状』『競争の番人』が相次いでドラマ化されるなど次々とヒット作を送り出す新川帆立さんは、『縁切り上等!―離婚弁護士 松岡紬の事件ファイル―』(23年刊)で、結婚の出口ともいうべき離婚を題材にした。今、大注目のお2人が作品やご自身の経験を通して、結婚について大いに語り合った。
『週刊文春WOMAN2024秋号』掲載の対談を掲載する(前後編の後編/前編はこちら)。
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実家から「あんなこと言っちゃいけません」と電話が
――『婚活マエストロ』は、婚活パーティーを東京ではなく、地方都市を舞台に描いたところが新しかったのではないかと思います。
宮島 最初に婚活というテーマを提案された時、編集者さんたちが周囲の婚活について語ってくれたんです。アプリで相手を見つけたとか、内縁関係がどうとか話してくれたんですが、住んでいる世界が違うと思った(笑)。私はずっと滋賀に住んでいて、周りで全然そういう話を見聞きしない。だから婚活パーティーを地方でやるというアイデアが浮かんできました。
以前、テレビ番組で、新川さんが嫌だったこととして「女に生まれたことと地方に生まれたこと」を挙げていらっしゃったのを見て、その言葉はすごく刺さりました。
新川 あの放送の後、実家から「あんなこと言っちゃいけません」と電話がかかってきて、そういうところが嫌なんだよ、って(笑)。
私は宮崎県育ちですが、本を読む子が周囲にいなかったし、トップ大学に進学すると今度は女というだけで色メガネで見られる。東京で男に生まれたら、もっと素直でいいヤツになっていたんじゃないか、と思ったりとか。スタート地点が自分の性格と遠いところにあって、心地よい場所にたどり着くのに時間がかかりました。
宮島 私は女に生まれたことはそれほどではないけど、静岡出身なので、地方で生まれたことに関しては共感できます。出版社の編集者って東京出身で、いい大学を出ている人が多いイメージ。それがめちゃめちゃうらやましかったりしますね。
――新川さんには11月刊行の新作『ひまわり』があります。交通事故で頸髄を損傷して肩から下が麻痺した朝宮ひまりが、司法試験に挑戦する日々を描いた物語です。
宮島 すごく良かった。最初から司法試験合格というゴールは見えているじゃないですか。だけどそのゴールまでいく過程がとても興味深かった。受験に音声入力ソフトが使えるかどうかが問題になるところなんて、胸が痛くなりました。ディテールが真に迫っていて、最後はああ、よかったと一緒に喜べる。推進力がすごかったです。