――それは「しつけ」というより、「虐待」では。
糸井 今振り返ると、そうなのかもしれません。でも当時は、祖母も母も虐待しようとしていたわけでないと思うんです。ただ、宗教の教えを守るため、私をよい子に育てるため、という意識でやっていたんだと思います。
「自分は親に期待されていない」と思うようになったワケ
――ご兄弟も、お母さんやおばあさんから同じようなことをされていた?
糸井 いや、兄と弟が同じような状況にあったかどうかは、覚えていないんです。自分が実際に受けた記憶はあるんですけど。
ただ、ほかの部分で兄弟間の格差みたいなものは感じていました。
――それはどういう?
糸井 兄と弟には、6畳の部屋と新しい学習机が与えられていたのに対して、私の部屋は2畳しかなく、机はもらい物の古い机で。
弟は小学校の高学年くらいから学習教材を買い与えられて、公文にも行かせてもらっていたけど、私は行かせてもらえなかったんです。そういうのもあって、小学校の高学年くらいから、自分は親に期待されていない、大切に扱われていない、と思うようになって。
――「なんで自分だけ」と思いますよね。
糸井 そうですね。小さい頃から親にかまってもらえなかったし、自分だけ愛情を注いでもらっていないと感じていたから、当時から自己肯定感がありませんでした。
さらに祖母からの「しつけ」もあったから、悪いことをしたら怒られる、罰を受ける、という恐怖心もあって。
そうすると、委縮して挑戦できない、行動できない精神状態に陥って、どんどん内向的な性格になっていって。劣等感も増して、次第に「自分はダメな人間だ」と思うようになっていきました。
中学2年で学校に行けなくなった理由
――家に引きこもるようになったのは、いつ頃からですか。
糸井 中学2年生の5月頃からですね。
――引き金になるような出来事があったのでしょうか。
糸井 いじめられたとか、何か直接的な出来事があったわけじゃないんです。ただ、中学2年生になって、数学や英語の授業についていけなくなったんですよ。
1年生のときは、通知表が5段階評価のオール3で、可もなく不可もなく、という感じだったんですけど。1学年上になったら、テストの成績がどんどん下がっていって。